暮れになると、ばたばたと忙しくなる。世の中が、クリスマスや忘年会なんかで、何かと賑やかなのを見ながら、せっせと目の前の仕事を片付ける。このごろはあっという間に日が暮れて、暗い時間がとても長い。
何となく夜のほうが仕事がはかどる。早くすませたよう。気付けば、もう周りには誰もいなくなっている。今帰ると色々な店もまだ営業しているだろう。少し気分転換をして帰ろうと思う。
下に降りると、ちょうど他のフロアの人と一緒になった。「遅いですね」と、思わず笑顔を交わす。お互い反対方向に出ようとすると、「あ、これ、よかったら」と小さな包みをポケットから出して、手のひらにのせてくれた。赤いリボンと小さなベルがついて、飴がいくつか入っていた。「取引先でもらって。どうぞ」そう言って、さっと帰っていった。
赤いリボンの色と色とりどりの飴を、しばらく眺めた。手のひらが、じんわりと温かくなったような気がした。
「手のひらの贈り物」
12/20/2025, 8:07:25 AM