題 今日にさよなら
もしもね、今日という日が切り取れたらどうする?
私は今日という日と明日という日は全部違うものなんじゃいかと思うの。
今日の気持ちと明日の気持ちがまるで違うし。
今日あったことをもう一度やって、明日同じような展開になるとは限らないんだもの。
だからね、私が今日隣を歩くコウタといい感じの会話をしたとしても、明日も同じような会話ができるか分からないのよね。
それが当然。
だから思うの。今日と明日は違う世界線なんじゃないかって。
逆に言えば、今日失敗しても、明日というリセットされた状態ならいくらでも取り返しがつくんじゃないかって。
「何考えてるの?」
隣でコウタが聞いてくるから、私は1拍沈黙する。
だって今日と明日って別物だよね?リセットされるよね?なんて言っても伝わらないのは分かりきってる。
え?何?どういうこと?って言われちゃうだけだ。
「え?コウタと一緒に歩けて楽しいなって思ってた」
なんて1番相手が喜びそうな無難な言葉を紡ぐ。
「ほんと?やった、俺もそう思ってるよ」
「うん、楽しいよね、一緒にいると」
と言いつつ、私の思考はまた戻っていく。
もしこのコウタが今日だけのコウタなら、明日はどんなコウタなんだろう?
より私に好意的なの?それとも冷たくなるの?
それは真夜中12時にリセットされるんだろうか。
12時になったらシンデレラのようにわたしの魔法も溶けるんだろうか。
コウタが好きという気持ちは、多分本当なんだろうけど、明日のリセットされた時、私もリセットされるならどうなっちゃうの?
私が明日の自分に変わるなららコウタのことを好きな気持ちが減ってしまう可能性もあるよね……。
なんて真剣な表情で考えてたらまたコウタが話しかけてくる。
「なんか難しい顔してるよね、どうした?」
「え?えーと、コウタと明日も会えるかなって悲しい気持ちになってた」
なんか大分考えてた事と違う気がするけど、とりあえず何か言っておかなきゃと思う私。
「なに言ってんだよ、もちろん明日も一緒に帰ろうぜ。部活終わりまで待っててくれる?」
「うん、もちろんだよ」
…でも、この会話も、今日のコウタが発しているだけで、明日のコウタには引き継がれていないかもなんだよね。
今、私がこのコウタと話せる瞬間っていうのはまさに、今しかないんだよね。
なんて思うと、今この時がとてもとても大事な時間に思える。
「いつもありがとう。私といてくれて。それに、楽しい話をしてくれて、私はコウタといられていつも楽しいよ」
と今この時にか言えないかもしれない言葉をコウタに伝える。
そうだよね。明日の私がもし消滅してしまうなら、違う気持ちになってしまうのだとしたら、今この瞬間の気持ちがとても大事だもの。
「俺こそ、ミユは俺の1番大事な友達だと思ってるよ……でもさ」
そう言葉を話すと、コウタの目の色が真剣に変わった気がした。
「俺は、ミユのこと、友達以上に大事に思ってる」
「えっ……」
私の思考が止まった。
えっ……。
えっ………。
えっーーーーー!!!!
いや、コウタは私のこと完全に友達だと認識してると思ってた!!
そ、そうなの?!
パニックな気持ちが私に襲いかかる。
私はコウタのこと好きだけど、でも、今即決めていいのかな…。もう少し考えた方が……。
なんて、考えた時に思い返す。
そうだ、明日はどうなるか分からないんだ。
明日はコウタも私も全然違う気持ちになっちゃうかもしれないんだ。
じゃあ今の瞬間に言われた言葉に、私は今応えたい。
未来にはもう決して通じ合えないのかもしれないんだから。
通じあえていたらラッキーだけど。
「わ、私もっ、私もコウタのこと、大好きだよ、友達なんてとっくに超えてるよ」
そういうと、コウタが嬉しそうに微笑む。
……ドクン。
その微笑みを見れただけで、気持ちを伝えた意味はあったかな。
そう思えた。
「嬉しい!じゃあ、付き合うってことでいい?」
コウタの言葉に私は頷く。
やや食い気味にウンウンって。
ねぇ、これって今日だけの幻なのかな。
もし今日にさよならしたら、コウタの気持ちも入れ替わってしまうのかな。
そうなら寂しいな。
積み重なって、ずっとずっとスキの気持ちが積もっていけばいいのに。
だけど、次の日にいきなり意見変えたり、態度が変わる人がいるのだって事実だ。
「ずっと好きでいるって誓うよ、俺にはミユだけだか……」
「だーめっ!」
ずっとなんて今の私には禁句だ。
私は先のことを言いかけたコウタの唇に私の人差し指
をあてる。
「先のことなんて、言わないで。今この時に好きでいてくれたら充分だから」
「……わかった。今はミユへの気持ちで1杯だよ」
「……私もだよ」
私たちは見つめ合いキスをする。
そして、私は思っていた。
明日という時が今日の延長でありますようにって。
もし明日コウタの気が変わって、やっぱ付き合うのなしってなったら辛すぎるから。
今日にさよならしたくない。
だからこそ祈ってしまう。
明日が今日の続きでありますようにって。
心から好きな人が隣にいてくれますようにって。
2/18/2026, 12:44:43 PM