バレンタイン(TOV)注:微腐
どこかの国の風習で、今日は好きな人にチョコレートを贈る日らしい。
ダングレストの人々はお祭り騒ぎが好きなので、そんな商売になる楽しいイベント、すぐさま導入された。
街をフラフラ歩いていると、それなりに顔の広い俺様にも声がかかる。
「あら、レイヴン、ちょうど良かった。これどうぞ」
「義理チョコ〜?でも嬉しいわ、ありがと」
両手で持てない数を渡されて、ホクホクでアジトに帰ってきた。
「さてと」
俺様はようやく、主目的である調理場に立つ。
今日は好きな人にチョコをあげる日ではあるが、日頃の感謝を伝える日でもある。これは両方を兼ねて贈り物に気持ちを託せるチャンスだった。
「ただいま」
依頼をこなして、夕方、ユーリがアジトに帰ってきた。たちこめる甘い匂いに瞳を輝かせる。
「あ、お帰り、青年」
「この匂い、クレープか?」
「そそ、さすが甘党、匂いだけでわかるのね」
レイヴンはたっぷりチョコがけクレープをユーリに差し出した。
「今日はこういうお祭りだからね」
「おお、愛の告白か」
冗談とわかっていても、その指摘にはドキリとした。
「そうよー!わかってるじゃない」
いつも通りに振る舞えたと思う。
ユーリはじっとこちらを見ていたが、甘いものの誘惑には勝てなかったらしい。すぐにクレープに齧り付いて、瞳を輝かせた。
「うめぇ!」
「そりゃ良かった」
ユーリはモグモグと口を動かしながら、レイヴンの方に手を差し出した。
その手の上に、何かがのっている。
「ん?」
「こういう祭りなんだろ」
なんと!
ユーリが、ラッピングされた箱を差し出していた。
「ええ〜!おっさんにくれるの??」
「まぁ、甘いの苦手らしいからどうかと思ったけどな。これならそこまで甘くなくて、酒のつまみに良いらしいぜ?」
店員にわざわざ聞いてくれたのだろうか。
俺様のために?
嬉しい。
嬉しい。
満面の笑みに崩れそうになる顔を、なんとか持ち堪えて普段通りを装う。
それでもウキウキする気持ちは抑えられなかった。
「それじゃ、乾杯でもしますかね」
いそいそと、お酒を準備する。
酒の席となれば、未成年の少年少女は立ち入れない。
それも嬉しかった。
「乾杯」
ふたりはチョコを肴に、酒のグラスを合わせた。
ユーリは真剣な顔をして、レイヴンの目を見て、
「好きだぜ」
と言った。
「…クレープが、でしょ。いや、チョコが?」
「ははっ」
ユーリは否定も肯定もせず、屈託なく笑った。
2/14/2026, 10:54:59 AM