同情(オリジナル)(異世界ファンタジー)
「聞いてくれよおおお!」
ラッツは手にした酒を机にドンと叩きつけた。
かなり酔っ払っていて、目が据わっている。
「宝探しの依頼を受けてさぁ!未盗掘の洞窟に行ったわけ。これがホント未踏なわけよ。だから罠の解除も回避も大変でさぁ!俺、めっちゃ大活躍よ。依頼人は怖がって一緒に来なかったけど、もう一組のパーティと共闘でさぁ。これがもう、あいつらマジで、全っ然役にたたねぇのよ」
ラッツの横には、旅のお供の騎士アレス。手には水。正面には、この村で合流した半獣のネオ。手には酒。
ネオの隣に回復魔法が使えるユーズ。手にはミルク。という配置である。
彼らをぐるり見回して、ラッツは続けた。
「結局さぁ、最奥で結構金目のお宝が見つかったわけ。こりゃいくつかガメてもバチ当たんねぇぞってくらい。俺が一番役立ったんだから、そんくらいの役得ないと納得いかんわけよ!それをだ!!あいつら!」
思い出してさらに激昂したラッツが、再び酒を机に叩きつけようとしたところで、ネオが無言で己の肉厚の手のひらを差し入れて、ジョッキ破壊を阻止した。
反対の手で、己の酒をぐいと飲む。
ラッツは俯いて、悔しさと怒りにブルブルと震えた。
「この俺を!!昏倒させて!!全部!!盗んでいきやがった!!依頼は失敗!!報酬ゼロ!!依頼人に罵倒される始末!!おかしいだろ!!こんなの!!」
力一杯叫んだのだが、仲間の誰からも、なんの言葉ももらえず、ラッツは顔をあげた。
まずは横を見る。隣のアレスは眉をひそめて、
「ラッツさん、宝探しの依頼で見つかった宝をくすねるのは良くない事ですよ。むしろ彼らと同じ側じゃないですか」
彼の性格そのままに、真面目優等生な回答をくれた。
斜め前のユーズは、アレスの言葉に深く頷き、
「そうですよ。ラッツさん。いつも自分がやってる事をやりかえされただけじゃないですか。そういうの、自業自得って言うんですよ」
と、冷たい。
正面のネオに目を向けると、彼はニッと笑い、
「無能だと思ってたヤツらにしてやられたのが悔しいだけだろ。うかつだったな」
と、核心をグサリと突いてくる。
ラッツは泣きたくなって、空に向かって叫んだ。
「誰も同情してくれない!!!」
「「「日頃の行い」」」
即答の三人の声がそろった。
ラッツは突っ伏して泣きわめき、三人は苦笑いしながら、彼が酒で意識をなくすまで愚痴に付き合ってあげたのだった。
2/20/2026, 2:33:47 PM