「丸くなるな」で始まる広告がありますが、
意外とその缶を飲んだことがない物書きです。
「星になる」がお題とのことなので、星のおはなしをひとつ、ご紹介。
前回投稿分から続くかもしれないおはなし。
最近最近のおはなしです。
都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、
人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐が、
親友の化け子狸が修行している和菓子屋さんから、何種類かの和風シュトレンを購入。
尻尾ブンブンで、帰ってきました。
抹茶シュトレン、小倉あんシュトレン、
和紅茶シュトレンにサツマイモシュトレン。
ゆずとミカンとチョコのシュトレンもあります。
「しゅとれん!しゅとれん!」
シュトレンと初遭遇の子狐は大興奮!
みたらしシュトレンをひとくちガブッ!切り分けるでもなく食べますと、
「おいしい」
バターと砂糖と、みたらしソースとあんこの味が、子狐の舌の上で幸福の宇宙を爆誕させまして、
「おいしい!」
子狐の目がお題どおり、まさしく、
星になる、のでありました。
「しゅとれん、おいしい、おいしい」
星になるキラキラ両目を輝かせて、コンコン子狐はみたらしシュトレンを、
ちゃむちゃむちゃむ、ちゃむちゃむちゃむ。
一気に食べ進めて、半分を通り越して、いつの間にか1本、全部食べてしまいました。
「しゅとれん、おいしい、おいしい!」
星になるキラキラ両目の子狐の隣では、なにか良くないものでも食べてしまったのか、
子狐の神社に来ておったドラゴンが、弱々しくうつ伏せで、口を開けて、ダウンしています。
多分ワサビでも食ったのです。
子狐はなんでも、多分、知っておるのです(多分)
「オッサン、オッサン、だいじょうぶ」
くんくんくん。子狐はドラゴンのパッカンしている口のニオイをかぎました——やはりワサビです。
『みれば わかるだろう』
きゅあおう。くぅおおうん。ドラゴンは虚ろな目で、もはや魂が星になる直前です。
よほど大量のワサビを、一気に食ったのでしょう。
「オッサン、オッサン、ワサビ、好きなの」
『ちがう』
「オッサン、ワサビ、きらいなのに食べたの」
『事故だ』
「オッサンくちなおし、しゅとれんどーぞ」
「ぎゃおお!!ぐぎゃおおおん!!」
あまい!違う、苦い!じゃない甘い苦い甘い!!
ぎゃおぎゃおぎゃお!!
子狐がドラゴンのパッカンしている口に、抹茶シュトレンをブチ込んだところ、
どったんばったん、ドラゴンは一気に元気になって、活発に、ドチャクソに、動き回りました。
抹茶の苦味とワサビの辛味と砂糖の暴力で、のたうち回っているとも言います。
まぁ、お題とは無関係なので、気にしないのです。
そんなことよりコンコン子狐、美味探求の同志たる人間の匂いを察知しまして、
さっそく、シュトレンの数種セットをその人間と一緒に、食べることにするのです。
「おねーちゃん!おけしょーの、おねーちゃん!」
それは、子狐を誰より上手にトリミングして、お化粧してくれる、女性の人間でした。
「しゅとれん!いっしょにしゅとれん!」
女性の人間は、ドワーフホトといいました。
「よしよしコンちゃん、あたしが、シュトレンにお星さまの魔法をかけてあげましょー」
子狐がドワーフホトのもとへ跳んでくと、
ドワーフホトはニッコリ笑って、ぱらぱらぱら。
和風シュトレンの白い粉砂糖の上に、赤や緑や黄色なんかの、小ちゃくキレイな金平糖を、
お星さまのように、少しずつ降らせました。
「おほしさま」
「手作りだよぉ〜」
「てづくり!」
さぁさぁ、お星さまのシュトレンを食べましょう。
子狐とドワーフホトは幸福に、和風シュトレンを分けあって、一緒にもぐもぐ!
やっぱり子狐もドワーフホトも、両目がキラキラ、星になる、のでありました。
12/15/2025, 9:35:53 AM