るに

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今ではもう遠い鐘の音が
もう耳障りじゃなくなった。
前までは
もっとずっと近くにあって、
鬱陶しいと、早く無くなってくれないかと、
思ってた。
家を出る時も帰る時も
毎回目に、耳にする
その鐘が、音が、
全てうざったく思えた。
イライラしてる時なんか特に。
明日が嫌でちょっと外に出た時も
その鐘はそこにあるから
もう引っ越そうかとすら思ってた。
ある日家の前に
黒いイタチが座ってた。
イタチなんか
ここら辺じゃ何処にでもいるし、
無視して家に入ろうとすると
私の頭の上まで大ジャンプをして
一緒に入ってこようとした。
最初はびっくりして振り落としてたけど
最近は家に入れても大人しいし
朝私が外に出ると
イタチも外に出てどこかへ行くから
放っておいていた。
友達が少なく
恋人なんかいるはずも無い私にとって
正直イタチといるのは居心地が良くて、
親友みたいな関係で、
小さな身体が大きな存在になっていた。
鐘のことなんかどうでも良くなるくらい。
紅葉が見頃の季節、
イタチは鐘と共に姿を消した。
噂によると
鐘はもう随分古くなっていて
置いておくと危ないので
撤去したとのことだった。
いつの間にか慣れていた鐘の音が無くなり
失って気づくということは
こういうことなのだろうかと
重さを感じない頭を触りながら思った。
"Good Midnight!"
ありきたりな起承転結。
私の人生に2年も関わっていないイタチと
5年は関わった鐘。
どちらも同じくらい
私の日常になっていたなんて。

12/13/2025, 3:03:39 PM