たくちー

Open App

 ふらふらと路頭に迷った旅人が灯台の明かりを目指して螺旋状の段差を登る。踏みならされた獣道は長い年月を感じさせる。灯台の前には一軒のコテージがあり、鍵はかかっていなかった。最低限の毛布や家具があり、ひび割れた食器には雨漏りした水が溜まっていた。テーブルには一冊のノートがあり、表紙には"書く習慣"というタイトルが書かれていた。パラパラと捲ると感謝の言葉と絶望の怨嗟が入り乱れており、さながら天国と地獄だった。だがどちらも本音なのだろう。誰にも知られずに消えていく言の葉を地縛霊のように現世に留める。思えば遠くまで来たものだ。今は冬だが、旅に出たのは夏頃だったか。ここに辿り着くまでに何万歩の努力をしてきたのか。そもそも努力したという認識すらなかったかもしれない。気づいたら此処にいた。ここを訪れた誰かも同じだったのかもしれない。遠い日のぬくもりを思い出しながらペンを置く。次に此処を訪れる誰かのためにペンは置いていくことにした。…ふと思い出してもう一度ペンを取る。

メリークリスマス。
来年こそは恵まれた年でありますように



題『遠い日のぬくもり』

12/24/2025, 7:06:56 PM