久しぶりに遊びに行って、庭の様子に違和感を覚えた。
池の上に湾曲した枝を伸ばしていた大きな松の木が無くなっている。かわりにまだ小ぶりな楓がそこに植わっていて、赤く小さな葉が茂っていた。
「あそこにあった松の木、どうしたの?」
「腐ってた」
「え?」
「二年に一度樹木医に診て貰ってるんだが中が腐って空洞になってるって言われてな。だから植え替えた」
「ふうん。まぁ、外からは分からないからねえ。でも君、落葉樹は葉っぱの片付けがめんどくさいって言ってなかった?」
新しく植えた楓ももうチラチラと葉が落ちている。他にもこの庭にはいくつも木が植えられていて、季節ごとに変える姿が家主の目を楽しませているが、いかんせん秋から冬にかけての落葉には難儀していた。
「·····まあな。でも紅葉するのはお前も好きだって言ってただろ」
「綺麗だからね。赤いのも黄色いのも」
真冬の今はもう葉は落ちきってしまって、新しく植えたという楓以外はほとんど丸裸だ。閑散とした光景だがこれはこれで風情があった。
――そう言えば、松の木に雪が積もった姿は綺麗だったな、などとぼんやり思う。
「あの松の木は良いものだったが、腐ってしまってはな」
家主はそう言って庭に降りると、落ちてしまった楓の赤い葉を一枚拾って戻ってきた。
「そういえば、うちの若い子がいつの間にかいなくなっちゃってねえ」
「·····」
「私にも物怖じしないで声を掛けてくれる、明るい子だったんだけど」
「·····」
「外からは分からなかったけど、中身は腐ってたのかな?」
「·····」
無言で差し出してきた赤い葉は、残火のようで。
「あの枯葉も、腐っちゃう前に片付けなきゃね」
「そうだな」
家主は低くそう答えると、縁側に腰掛けて私にも座るよう促した。
赤い葉を持ったまま縁側についた私の手に、家主の手が重なる。
火傷しそうに熱い手だった。
END
「枯葉」
2/19/2026, 3:23:13 PM