かたいなか

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私、永遠の後輩こと高葉井が勤務してる図書館は、
私立図書館なので、年末年始なんて関係ない。

ひとまず12月29日は月曜だから休館として、
30日も31日も、正月のサンガニチも開館する。
とはいえ、館長も副館長も、鬼ではないから、
年末年始にシフトを置く職員のその日の日給に関しては、祝日勤務手当で増やしてくれるらしい。

特別手当の情報を提供してくれたツウキさん、付烏月さんはガッツリ5日休むとのこと。
詳しい理由は教えてもらえなかったけど、
「本業」の方で、何かあったらしい。

私も付烏月さんの本業に転職したい
(給料の増減は知らない)

「後輩ちゃんが大好きなルー部長は、ツバメとスノーアクティビティの長期講習だよん」
ポリポリポリ。
自作らしいハニーローストピーナッツをつまみながら、付烏月さんが言った。

「なんかね、先日、詳しいことは知らないけど、
長野の山でソリスレーして、
速度超過で爆走からの暴走して、
最終的にガードレール突き破ったらしいよ」

「がーどれーる」
「うんガードレール」

「ソリスレーってなに」
「ルーブチョ、スキーもスノボもできないの」
「スキーもスノボもできない」
「それでソリに乗ったらしいんだけど
めっちゃハマっちゃったらしくて」
「めっちゃハマった」

「結果として山から滑走してって
凍結した山道まで落ちてっちゃって
ガードレールを突き破って
雪明かりの夜にバーンて射出されたらしいよ」

「しゃしゅつ」
「バーン」
「しゃしゅつ……」

「後輩ちゃんは、なんかこう、予定あるの?」
ルー部長という私の推しが、
雪明かりの夜に、月をバックに、ソリで射出。
なにそれって情報を付烏月さんから聞いて、
脳内で雪明かりとソリと推し部長のショート動画を生成して再生してると、
付烏月さんが、私に聞いてきた。

「えっ。 普通にシフト」
推しが射出。 推しが雪明かりの夜に射出。
もはやそのパワーワードがパワーワードで、
なんにも話せないし、頭がついてかない。
「うん普通にシフト」
推しが雪明かりの夜に山でソリしてガードレール突き破って月明かりをバックに射出。
もう分かんない。
そもそも推しがスキーもスノボもできないってのが意外……いやそうでもない……でもない?
もう分かんない。

「あら」
目が点になってる私の近くで、
今度は多古副館長が、スマホ見て呟いた。
「ちょっとアンタたち、」
その副館長が言うには、

「その『ルー部長』の射出映像、
手に入ったけど、見る?」

12/27/2025, 9:58:53 AM