—似たもの同士—
人からの頼みを断ることができない。
そんな俺の性格を見抜いた周りは、いつも面倒ごとを押し付けてくる。
締切が近い仕事とか、他人のミスの尻拭いとか、社内のイベントの幹事とかも。
俺はそうしたものを断らないが、不満が溜まらない訳ではない。体の内に積もりに積もっているのである。
部屋の中でゴロゴロしていると、インターフォンが鳴った。
「はい」
「先輩、開けてください」
モニターを見ると、会社の後輩が立っていた。
彼女も俺と似たような性格で、よく仕事を押し付けられる。何度か仕事を一緒にすることもあって仲良くなってしまった。
玄関の扉を開けた。
「おぉ、雪降ってるんだな」
マンションの三階から夜の町を見ると、家々の屋根は白かった。
「そうです、寒いので早く入れてください」
「はいはい」
彼女はレジ袋を片手に持っていた。
「今日は鍋にしますね」
最近、彼女は家によく来る。会社での不満が溜まっているのだろう。
まるで、外の雪のように積もっているに違いない。
「いつも悪いな」
俺はこたつでテレビを見ながら待った。しばらくすると、彼女が鍋を持って、こっちに来た。
「ビールでいいか?」
「はい、ありがとうございます」
冷蔵庫から二本、缶ビールを取り出した。
二人で向かい合って座る。
プルタブを引いた。
乾杯、と二人で缶をぶつけた。
「先輩、聞いてください——」
きっと今日も彼女の愚痴は止まらない。
雪は、たくさん積もれば除雪しなければならない。
彼女にとって、俺がその役割なんだろう。
でも逆に、俺にとっても彼女がその役割をしてくれている。
おそらく彼女は気づいていない。
お題:降り積もる想い
12/22/2025, 6:12:33 AM