「ここ」ではないどこか、別の世界。
世界線管理局という厨二ふぁんたじー組織の、
局内に整備されている広大な難民シェルターの、
中に存在する森林エリア内でのおはなし。
「君が見た夢」のお題に相応しく、月がよく見える木々の空白のあたりで、
おまたパッカン、ヘソ天で寝ているドラゴンが、
なにやら、うなされておりました。
「ぎゃお ぐぎゃお がるるるる すぴぃ」
ドラゴンは雄々しく、たくましく、美しく、
管理局に勤務するドラゴン種の中でも5本の指に入るくらいの強いチカラを持っていましたが、
ザンネン、眠気等々の本能には勝てない様子。
「ぐぎゃおおう ぎゃおおう フガッ」
ああ、ドラゴン、
君が見た夢は、どんなものだったのでしょう?
「気にしなくて大丈夫だと思いますよ」
ドラゴンの脇腹を背もたれ代わりに、パチパチ焚き火などしている人間は、
フガフガ苦しむドラゴンの顔を見て、言いました。
「どうせ先代のルリビタキ部長に、カロリーテロを食らっている夢でしょう」
十中八九、私の焚き火の音が、先代が焼く肉の音に聞こえているのでしょう。多分それだけです。
ズズッとカフェインレスコーヒーなど飲む人間は、実は管理局に勤めるドラゴンの部下でして、
数時間前まで、一緒に大仕事をしておったところ。
管理局を勝手に敵視している別の組織が
管理局に勝手に侵入してきて
管理局の資金データを勝手に荒らして
最終的に、管理局内の警察のような部署が、
すなわちヘソ天ドラゴンの部署が、
ガッチャン、捕縛したのでした。
ところでこの「別の組織」が管理局の資金データを荒らしたせいで、経理部の資金リストがシッチャカメッチャカしてしまって、
そのせいでマンチカンという経理部職員が大変な目に遭ったのですが、
それは、まぁまぁ、前回投稿分のおはなし。
「で?」
ドラゴンの脇腹に寄りかかって、焚き火などして、カフェインレスコーヒーを飲む人間が聞きました。
「その数時間前の事件が、どうしたんです?」
人間の視線の先には、
人間から温かいカップを渡されて、その中のコーヒーをちびちび飲む、マンチカンがおりました。
というのもマンチカン、
別の組織のせいで大変な目に遭いましたので
その犯人に八つ当たりを、ペチペチ、したのですが
どうにも軟弱だったせいか、
さっぱり、犯人が痛がらなかったもので。
なんなら
「非力だな?」とドストレートに言われまして。
精一杯八つ当たりしてスッキリするという、
マンチカンが見た夢は、
ガッツリ、潰されたのでした。
「なんか、なんかこう……」
経理部のマンチカン、言いました。
マンチカンの顔は、それはそれは、悔しそうでした。
12/17/2025, 9:58:47 AM