やなまか

Open App

秋の深まった、ささやかな暖かさのある昼間だった。風は冷たいけれど優しい。
岩間に作られた広場は山奥とは思えないほどなだらかだった。きっとここの主が開墾した跡だからだろう。
遠くで小川の流れる音がする。平屋の小屋は五つ。そのうちの大きな家から子供達が何人か飛び出してきた。耳の長いもの、毛皮や鱗ににおおわれたもの、四足歩行のものもいる。
甲高い楽しそうな声を聞きながら、カノンはぴたりと立ち止まった。
平和な光景だと誰もが口を揃えて言うだろう。
多くが迫害されて逃げ延びた子供や大人、老人達が住まう終の村だった。最初は荷運びの依頼でここまで来たけど、数日過ごしてすっかり愛着が沸いてしまった。はぐれ魔物達が人間と協力して畑を耕し水を運び、手負いの獣戦士達は警備の後継者を育てる様子を今朝見てきたばかりだ。
ここは村としてしっかりと運営されている。少し産業としては弱いけれど、放牧と畑と林業。立派じゃないか。
「どうした、お使いの途中だろ」
「おっちゃん」
2メートルのがっしりしたオーガに話しかけられた。人語が話せるのだ。そしてここの管理者。彼の善意で自分達は置いて貰っている。
「すぐ向かうよ」
「なんだ、寂しそうな顔して」
カノンは言葉につまった。なんでこんな感傷的な気分になったか自分では全然分からなかったからだ。
「そう、かも。ぼくの育った村に似ているんだ」
「ずっと向こうの森を越えたところだったか」
「ここのほうがずっと広いし整備されてる」
光栄だ、とおじさんはにやっと笑った。
「子供なのに、えらい遠くから来たな。良く頑張ったな」
「みんなと一緒だったから」
幼馴染み二人と、妖精と、道連れ二人。賑やかな旅だった。
「それでもえれぇな。そんなに気に入ったなら、うちの子になっちまえ」
大きな手ががしがしとカノンの頭を撫でる。
逃げたい。遠くに。ここに住みたい。みんなと一緒に。でもそれは叶わないんだ。色んな感情が渦巻いて、ちょっと鼻がつんとする。
おじさんは差別をしない。色んな種族な子供達を分け隔てなく愛情深く育てている。夢の未来をみているようで…切なかった。

2/20/2026, 7:50:34 AM