るに

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ぼっ。
キャンドルに火をつける。
薄暗く照らされる部屋の中、
ふわりと広がる
無地のワンピースを着た少女が1人。
ゆっくりと、透き通る声で
何かを話し始める。
むかしむかし、
ある所に、
何かをとにかく集めることが大好きな
収集家がいました。
普段使い出来るものから
ただ見るだけのもの、
見ないのに集めて
倉庫に保管するものまでありました。
収集家は好きなものを
好きなだけ集めて
眺める時間が大好きでした。
ある日、
収集家は収集することに対して
意味が欲しくなりました。
意味のない収集こそ
楽しく満たされる瞬間だったのに、
いつの間にか意味というものを
持ちたくなったのです。
人は年月が経つと
ガラッと変わってしまうものですね。
それから収集家は
何でもかんでも集めるのを辞めました。
もう収集家では
無くなってしまったのです。
趣味は無くなり、
その人はその人では無くなっていきました。
意味を求める中で
自分という
無くし物をしてしまったのです。
これは何のためにある?
どんなことに必要?
最低限欠かせないのは?
いや、本当に意味が欲しかったのは?
私、なんで生きてる?
風で揺れるキャンドルの灯り。
少女が窓を閉めることなく、
そのまま風で
キャンドルの火は消えてしまった。
いや、
風で消えたかのように思えた。
"Good Midnight!"
生きている事に意味なんか無くても、
自分さえ無くさずにいれば、
幾らでも意味を作り出せたのに。
そう微笑みながら話し終え、
風が届く前に
ふーっと息を吹きかけた。

12/23/2025, 2:45:43 PM