NoName

Open App

誰よりも好きな人がいた。

人生の半分以上、私はその人を好きでいた。

同級生であり、父であり、母であり、兄であり、姉であり、
弟でもあって妹でもあるような、不思議な人だった。

たぶん私たちは、
その時々で受けた傷に合わせて役割を交換し合う、
極めて依存しやすい関係だったのだと思う。

行く先が違っても、
私の心は、この人と一緒に在る。
魂のどこかがずっと繋がっている。

そんなふうに、疑いもせず信じていた。

ある日、ふと思い立って
大好きな人の名前を検索した。

妙に用意周到な自分が可笑しくて、
住んでいる地域までキーワードに添えた。

出てきたのは、とある写真コンクールの受賞ページだった。

小学生の男の子が、レンズに向かってピースしている。
どこにでもありそうな朝の一瞬を切り取った写真。
タイトルは「いってらっしゃい!」。

その下に表示されていた名前は、
まぎれもなく、あの人だった。

そんなまさか、と思う自分と、
やっぱりか、と思う自分が同時にいた。

ちゃんと家族を愛しているのだろうか、
なんてことを考えてしまう私は、
たぶん誰よりも惨めだった。

だって、いつも先に約束を破っていたのは私のほうだ。

それでも私は、
誰よりも、誰よりも、
あなたたち家族の幸せを祈っている。

大好きだった人の遺伝子を、これっぽっちも受け継いでいない男の子の写真を見ながら、
私は、自分の初恋の命日に、そっと手を合わせた。

『誰よりも』

2/16/2026, 1:27:05 PM