NoName

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2/16/2026, 1:27:05 PM

誰よりも好きな人がいた。

人生の半分以上、私はその人を好きでいた。

同級生であり、父であり、母であり、兄であり、姉であり、
弟でもあって妹でもあるような、不思議な人だった。

たぶん私たちは、
その時々で受けた傷に合わせて役割を交換し合う、
極めて依存しやすい関係だったのだと思う。

行く先が違っても、
私の心は、この人と一緒に在る。
魂のどこかがずっと繋がっている。

そんなふうに、疑いもせず信じていた。

ある日、ふと思い立って
大好きな人の名前を検索した。

妙に用意周到な自分が可笑しくて、
住んでいる地域までキーワードに添えた。

出てきたのは、とある写真コンクールの受賞ページだった。

小学生の男の子が、レンズに向かってピースしている。
どこにでもありそうな朝の一瞬を切り取った写真。
タイトルは「いってらっしゃい!」。

その下に表示されていた名前は、
まぎれもなく、あの人だった。

そんなまさか、と思う自分と、
やっぱりか、と思う自分が同時にいた。

ちゃんと家族を愛しているのだろうか、
なんてことを考えてしまう私は、
たぶん誰よりも惨めだった。

だって、いつも先に約束を破っていたのは私のほうだ。

それでも私は、
誰よりも、誰よりも、
あなたたち家族の幸せを祈っている。

大好きだった人の遺伝子を、これっぽっちも受け継いでいない男の子の写真を見ながら、
私は、自分の初恋の命日に、そっと手を合わせた。

『誰よりも』