「正和!」
香織は叫ぶ。
「ホントに行っちゃうの?」
正和は会社の事情で遠くの街へ行くことになった。
「ごめん香織、俺にはどうすることもできなかった。」
「待ってよ!わたしどうしたらいいの?なんであんただけ転勤になったのよ?」
「…。」
正和は、香織の質問に答えられない。周りに知られたらかなりの信用を失う。
「ねえ、なんであんただけなのよ!」
今にも泣きそうな顔で見つめる彼女を前に重い口を開く。
「ごめんよ…課長が会社で保存してた客のデータを流失して部で責任を取ることになってしまったんだ。」
「なら私もついてっていいでしょ?」
「それが、行けないって…」
「なら、行かないでよ!」
香織は、泣き出した。ここ何年も付き合っていた彼が急にいなくなる。どれだけ悲しいことか。
「ごめん…もう行かなきゃ。」
正和はこうして去っていった。
昨日の晩に香織は空に願った。
「どうか、正和をどこにもやらないでください。」
流れ星が見えた。しかし、彼女の願いは叶わず消えた。
11/3/2025, 11:19:50 PM