sairo

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気がつけば、見知らぬ部屋で三面鏡を前に座り込んでいた。
窓から差し込む月明かりが三面鏡を照らし、暗がりに自分の姿を映し出す。表情もなく鏡を見つめるその姿は、まるで幽鬼のように虚ろだった。
鏡から目を逸らせずにいれば、自分の意思とは無関係に片手が上がる。鏡に触れようと、指先が近づいていく。
だが正面の鏡に映る自分は、凍てついたかのように動かない。虚ろな目をして、手が触れるのを待っている。

手が鏡に近づく。止めることもできず、逆らう意思もない。
微動だにしない、正面の鏡に映る自分へと指先が触れる、その寸前。

背後から伸びた誰かの腕が手を掴み、そのまま後ろへと引き倒した。

12/28/2025, 3:34:03 PM