Non

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〈0からの〉

クシュンッ。
真っ暗闇の部屋で、僕はくしゃみをして目を覚ました。
枕元に置いてあるスマホを手に取り時刻を確認すると、まだ夜明け前だということに気づく。
まぁ、起きていようが寝ていようが、行く場所もやることもない引きこもりの僕には関係ない。
そう割り切って再び布団に潜り込むが、なぜか眠れない。
大きく溜息を吐き、「ハァ……」と声を漏らして起き上がる。
スマホを開き、何となくネットを眺めていると、僕と同じように起きている人たちが投稿しているのが目に入る。
いくつかの投稿を眺めているうちに、ふと思ってしまう。
何度も考えたことはあるけれど、理解できない、できるはずがないと自分に言い聞かせ、考えないように心の奥へしまい込んできたこと。
みんな、オタ活や好きなことをするために外へ出て、働いている。
じゃあ、僕はどうだ?
親に甘えて、衣食住はもちろん、スマホ代だって全部出してもらっている。
好きなことと言えばSNSくらいで、それも「これに勇気をもらった」とか、「この人に会うために頑張りたい」と言えるほどの“好き”は見つかっていない。
思えば子供の頃からずっとそうだった。
辞めたいこと、怖いことから逃げて、いつも親に甘えてきた。
みんなが僕よりも先にレベルを上げて、どんどん先へ行ってしまうのを見て、
「僕には無理だ」とリタイアボタンを押して、気づけばもう三年もここにいる。
自分で選んだはずなのに……。
どうして今になって、こんなにも「後悔」という文字が浮かんでくるんだろう。
そう思った瞬間、ふと目を見開き、スマホの画面に視線を落とす。
日付が変わっているのを見て、「あぁ……」と小さく納得した。
そうか。今日は僕の誕生日なんだ。
だから、こんなことばかり考えてしまうのか。
ついでに時間を見ると、考え込んでいたせいか、時刻はもう五時になっていた。
こんなことを思い続けて三年。
このタイミングを逃したら、僕のレベルはずっとゼロのままなんじゃないか。
……なんか、ちょっと嫌だな。
でも、外に出たところで本当に変われるのかも分からない。
それでも、このままじゃダメだよな。
そう思い、クローゼットの奥にしまい込まれていた、ほこりを被ったジャージを手に取り、袖を通してリビングへ向かう。
リビングでは、ちょうど母が朝ごはんを作っていたらしく、久しぶりに顔を合わせた。
すると母は、なぜか涙目になりながら僕に抱きついてきた。
「……0からでも、変われるかな」
そう零すと、母は「ええ、変われるわよ」と言って、さっきよりも強く僕を抱きしめてくれた。

2/21/2026, 5:55:28 PM