人魚の声帯は剥がれ、肉は削がれ、鱗はネックレスとして売られるようになった。「外の世界が見たい」と言い浅瀬へ出た家族の行方は、今も分からないままだ。
我々は歌を歌う。それは弔うためでも祈るためでも無く、呼吸や寝返りや瞬きのように、ただ意識せず繰り返すものだ。自己の連続性の証明であり、表現や楽しみではない。
我々は不老不死ではない。全てはヒトによる迷信なので、我々の肉を食べたところでどうなる訳でもない。
我々は尾鰭を持つ。だがそこに美しさや特異性を見出さない。尾鰭の柄や色合いで個を区別しないからだ。深く暗い海において、自己と他との間に境界を引く必要はない。
我々はヒトの王子を求めていないし、沈没しそうな船からヒトを救い出したりはしない。起こる全てに干渉しない。
ヒトは我々にとって太陽のようなものだ。
我々がイカロスだとするのなら。
お題 ―「太陽のような」
2/22/2026, 6:47:04 PM