小さな頃の、大事な思い出。
冬になると両親に連れられて、スキー場で一日中雪と戯れたものです。ソリで遊ぶところから徐々にスキー板で滑走し始め、ついにはゴンドラに1人で乗って、ゲレンデを爆速で滑り倒す子供と化しました。
山の上までゴンドラに乗ること。これが最初はなかなかに恐ろしくて、父の手と保護バーをがっちりと握っておりました。
だって、とてもとても、高いのです!
一本の鉄綱に鉄の椅子が無数に吊るされて、風が吹いたり運搬されている誰かが動いたりすると、ダイレクトに振動が来るのです。だから1人乗りのゴンドラなんて怖くて絶対に乗れない、などと、思っていたのです。
でも、乗る回数を重ねるにつれて、徐々に怖さが薄れていきました。勿論慣れもございますが、それ以上に好きなものができたのです。
たとえば、高いところから見る、遠方の山の景色。
冷たい空気を感じながら、雪の静寂に耳を澄ます。
自らの呼吸音と、ゴンドラの摩擦音。そっと振り返れば乗り場はもう遥か遠くにあって、賑やかな人の声はなく。
そうして日常から切り離されたあのひとりだけの数分間が、幼心に、何か特別なことの様に感じられたのです。
おとなと同じことが出来ている、とか。多分そういう、ちいさなあこがれもあったのだと思います。
まっさらな雪の上へ板を降ろし、雪原のキャンパスに軌跡を描く。痛いほどの冷風と轟音を真正面から浴びて自由に滑るあの清々しさは、いまだに忘れられません。
ああ、また滑りたいなあ。
12/17/2025, 3:07:09 PM