危険であるため、封印された魔法の鏡があった
その名を、凍てつく鏡
この鏡で自らの姿を見た者は、心が凍てつき、感情の起伏が乏しくなる
鏡に映る自分に感情を奪われると言われており、実際、鏡を見たものによると、鏡の向こうの自分は活き活きして見えたとか
感情を失えば、その人はまともに生きることは難しくなるだろう
そんな危険性の高い凍てつく鏡は、頑丈で、あらゆる手段を用いても破壊することができない
ゆえに、立入禁止の危険物が封じ込められる場所に移された
そんな中、凍てつく鏡を覗きに行く男がひとり
彼は、熱い男だった
いや、暑苦しいと言ったほうが正しいか
男は親切で優しく、いいやつと言って差し支えなかったが、鬱陶しいと思う者は確かにいた
そういう人間は知らずに恨みを買う
彼を恨むその者たちは、彼が凍てつく鏡の危険性を取り除ける、と管理組織に嘘をつき、適当な頼みごとを彼に対してでっち上げ、凍てつく鏡のもとまで送り出した
彼の感情を奪うために
男はいよいよ凍てつく鏡の前に立ち、被せてあった布を外す
男は鏡の中の自分の姿を見た
その瞬間、鏡にヒビが入る
そして、亀裂はどんどん大きくなっていく
凍てつく鏡はそのままあっけなく砕け散った
何が起きたのか
理由を説明しよう
感情を奪われるには、男の心は暑苦しすぎた
凍てつく鏡が男の感情を奪い去ろうとしたが、そのあまりの暑苦しさにキャパシティオーバーを起こしたのだ
高い心の熱量により、鏡は耐えきれなくなり結果、砕け散った
以上が、鏡に起きた出来事の全てである
戸惑う男はとにかく外に出て事情を説明
すると管理組織の者たちは歓喜しながら礼を言った
彼は何がなんだかわからなかったが、とりあえず自分が何かの役に立ったということは理解したので、ひとりひとりに握手をして笑いかける
後日、彼を嵌めようとした者たちは捕まることとなったが、男は最後まで何が起きたのかよくわかっていなかったという
12/27/2025, 11:36:44 AM