ストック1

Open App
2/21/2026, 10:38:26 AM

0からの始まり
人生というものはそういうもの
0から人は前へ進むのだ
いや、本当にそうだろうか?
0というには、自分を生かすものが周りにいる
誰しも、1以上の数字から人生は始まるのではないか
その最初の数値は、どれほど恵まれているかで変わるのだろうが
私も当然、0からなわけがない
なので、私は周囲への感謝は忘れないように過ごしている
私の誕生時、0より大きい数字に押し上げてくれた人たち、今現在助けてくれる人たちの存在はありがたいし、私自身も誰かの数字を押し上げる存在でありたい

ここで終わらせておけばいい話なのだろうが、世の中には光あれば影もある
私にも素晴らしい面があれば、醜悪な面だってある
いいところだけアピールするのは、相手に対して不誠実だと、私は思う
私の影
私は、悪意をもって他人の数字を下げようとする人間を決して許すことができない
そういった人間を見ると、私は相手の数字を下げてやりたくなる
傲慢極まりない私刑だ
それが私の悪質な部分
言うまでもなく、私に他人の善悪を判断した上で裁くような権利も、公平性も、正当性も、なにもない
しかし、私は自分でも止められない
他人を押し上げたいと願いながら、一方で悪と認識したものを突き落とす

こんなことを続けていれば、いつかは報いを受ける
そんな予感はしている
私は、自分で自分の数字を高め、影から脱しなければいけないのかもしれない
私も変わらなければならないのだろう
人の悪意を見過ぎずに、他人の善意を多く吸収する
そんな人間に

2/14/2026, 11:09:28 AM

私はバレンタインの精霊だ
そのせいだろうか?
日本へちょっと旅行へ行った2月14日
どこかで私の話を聞きつけたのだと思う
私のもとへ、主に女性がつめかけ、祈ったり願ったり、拝んだりしてきた
バレンタインでうまくチョコを作れますように
うまくチョコを渡せますように
チョコを貰えますように
などなど
中には私に手作りチョコを捧げる人まで
私は困惑しつつも、笑顔で幸あれと応える
手を振る
感謝される
みんな、私の言葉に感激し、嬉しそうに去っていく
そんな人々を見送りながら、私は心穏やかではいられなかった

……言えない
私がバレンタインの精霊と言っても、バレンタインデーの精霊というわけではないなんて
私、実は
英国の名門、バレンタイン家の守護精霊
彼らの先祖に大恩があり、その昔、彼らの血筋に連なる一定範囲の者たちに加護を与える、と約束していたのだ
騙す気はないんだけど、勘違いした人たちがあまりに期待に胸膨らませるようなキラキラした目で見てくるものだから、違うとは言えず……
せめて私も、あの人たちのバレンタインデーが幸せなものであるように、祈りを捧げよう
あー、でもなんだか罪悪感がわく
勝手に周りに勘違いされただけなのに

2/11/2026, 11:06:38 AM

「この場所で……決着をつけよう」

ラスボスAが城の前の広場で、落ち着いた口調で俺に告げる
大切な人を救えずに闇堕ちした悲しきラスボスAは、しかし俺の求める敵ではなかった

「悪いけど、ハメ技で倒させてもらうわ」

「なに?」

俺はそのままラスボスAが行動する暇も与えず、数ターンでハメ殺しをして倒した

「この私が、こんな容易く討たれるとは……これも復讐心の代償か
カタリナ、今、君のもとへ……」

情緒もなにもないが、これでいい
俺がラスボスAを倒すのは7回目なのだ
もう一度やり直さないといけないのに、ラスボスAに苦戦している場合ではない
次の周回だ
ラスボスは分岐によって5人のうちの誰かに変わる
ラスボスAはカタリナが途中で死亡した場合にラスボスになる
今の所、他のラスボスに関しては、特定のイベントを達成前にある事実を知ってしまった場合にラスボスになるラスボスC、俺が特定の人物を殺害するとラスボスになるラスボスD、俺が特定勢力に入るとラスボスになるラスボスEと戦闘済み
しかしラスボスBとだけ戦っていない
フラグ管理がシビアなのだ
ラスボスAの条件を、カタリナ死亡以外すべてを満たした時、ラスボスがBになるわけだが、カタリナが死ぬと当然、ラスボスはAになる
そして、カタリナはうっかりしてるとすぐに死ぬ
どんだけ死神に愛されてるのか、と言いたくなるくらいちょっとしたミスで死ぬ
ラスボスA、B分岐ルートでの世界のカタリナへの殺意が半端ない
おそらく、俺はラスボスAの次にカタリナの幸せを願っている
だって、そうしないとラスボスBと戦えないから
そして、厄介な事実がここにある
カタリナの生死とラスボス確定を知るタイミングは、ラスボス戦なのだ
俺は毎回、空から城の前の広場に降り立つラスボスの声と顔を祈るような思いで聴き、見る
そして毎回カタリナが死んでいて、ラスボスはAになるこの地獄
正直俺は嫌になりかけたが、今度こそはBと戦う
今まで取っていない選択肢の存在に気づいたのだ
普通、カタリナを生存させたければ絶対に取らないであろう選択肢
この俺が直接、カタリナを殺害する選択肢だ
矛盾するように見えるかもしれないが、俺はピンときた
この選択肢の出る場面が、明らさまに不自然なのだ
今まで守る、助ける選択肢しかなかったのに、ここに来て突然、カタリナには世界にとって不都合な部分があるから、これ以上カタリナを巡って争いの輪を広げないようにと、俺が殺す選択肢
俺はそこになんらかのトリックを感じ、一縷の望みをかけて選択した
崩れ落ちるカタリナ
叫ぶラスボスA
退散する俺と仲間たち
俺は魔法をカタリナへ撃ったわけだが、派手な代わりに、気絶させるだけで怪我もしない程度の威力の電撃
これで周りはカタリナが死んだと思うし、カタリナのもとへ駆け寄ったラスボスAだけはあとで生存に気づき、どこかへ潜伏するだろう
完璧だ
ラスボスAはラスボスではなくなる

そして、運命の時

「この場所で……決着をつけよう」

ラスボスAと同じセリフを言っているが、声も姿も異なる
世界を救うため、カタリナを犠牲にしようとした男
そいつがラスボスBだ
AルートではラスボスAに復讐で殺される
ようやくBルート

「この時を待っていたぜ」

俺は気合を入れて、初めてラスボスBとの戦いへ臨むのだった

2/8/2026, 11:39:20 AM

「当店のスマイルは有料です」

気持ちのいい笑顔で対応してくれた店員さんが、恐ろしいことを言い放つ
私は自分の耳を疑った
スマイルが有料?
こちらから要求もしてないのに?

「ご納得いただけないのも無理はありません
しかし、これには理由があるのです」

店員さんによると、これも従業員への負担軽減策なのだという
楽しくもないのに客に笑顔を振りまく
ふざけた客にも笑顔を振りまく
こちらが頑張っていつも笑顔を貼り付けて対応すれば、それが当然だと客はつけ上がる

「しかし、従業員も人間です
調子の悪い時もあれば、とてもじゃないけど笑顔になんてなれない状況も出てきます」

それはそうだ
常に絶好調で働ける人なんていない
世の中には、店員さんをレジ用ロボットか何かと勘違いしているような、礼儀知らずな客もいる
その中で笑顔を絶やすな、なんて私にはとても言えない

「ご理解、痛み入ります
しかし、それでも我々はできるだけ笑顔を保ち続けなければならないのです
もはやそれが世の中の普通になってしまったので
そこで、笑顔に利益を生み、そのお金がそのまままるごと従業員のポケットに入るようにすれば、従業員も笑顔で働けるのではないか……そう思ってスマイル有料が導入されたのです」

なるほど……
店員さんたちが負担なく働けるように、あえてスマイルに実益を与えたわけか
それに有料にすれば、スマイルが当然という風潮も無くなるかもしれない
でも、逆にお金をもらう以上、余計に無理やり笑顔にならないといけないんじゃあ……

「大丈夫です
問題行動が確認されたお客様にはスマイル分返金の上、態度をなんとなく悪くして対応しますので」

防御もちゃんとしてた

「ということで、スマイルが有料でもよければ、ご注文をどうぞ」

私はスマイルにもお金を払うことに決めた
こういう仕事をしたことがないので店員さんの苦労はわからないけど、日々かなり大変そうだと思ったから
私は少しでも、頑張る店員さんを応援したい!
注文を終えた私は、上乗せされたスマイル代も払い、心の中でエールを贈るのだった

2/4/2026, 1:41:29 PM

Kiss
ああなんてロマンチックな言葉だろう
二人の愛を育む尊いものだ
しかし俺が今しているキスは、ロマンもなにもない、嫌なものだ
問題は俺がキスしている相手
嫌なのだからもちろん恋人などではない
ならばキスの相手は誰か?
人間ではないし、動物でもない
地面だ
俺は地面にキスしている
あまりの衝撃で痛む体を動かせない
あんな化物だなんて聞いてなかったんだ
束になってかかりゃボコボコにできると高をくくってた俺を責められるやつはここにはいないだろう
みんな同じことを考えていたはずだからな
まずは蹴りで五人ふっとんだ
次にパンチ二発で四人が回転して倒れた
その後、チョップで俺が地面とキスをした
あとは、仲間の怒号と悲鳴が聞こえて、なんとなくどういう状況かわかる
この世に主人公がいるとしたら、ああいうやつなんだろうな
そんな考えが頭に浮かぶ
くだらないことを考えているのは余裕があるからじゃない
現実逃避して今日の出来事がトラウマになるのを必死に防ごうとしているからだ
効果のほどは怪しいが
このぶんじゃ、あいつはボスのもとまでたどり着くだろう
そうなりゃこの組織もおしまい
カリスマ性はあるが、椅子に座ってふんぞり返るだけのボスじゃ勝てるわけがない
あーあ
こんなことになるんなら、組織に誘われた時に断っとくんだったな
これが金に目が眩んで道を外れたやつの末路か
因果応報ってこういうのをいうんだな
ま、生きてるだけいいか
相手が相手なら俺はとっくに殺されてただろうぜ
道は厳しいが、今度はまっとうな職について、まっとうな生活をしないとな
しかし、俺もキスできるくらいのラブラブな恋人が欲しかったぜ
地面じゃ恋人にできねえよ

Next