綴 白

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朝、目が覚めてリビングに行くと、綺麗に包装された箱が机に置かれていた。

差出人は、夫だった。

夫からの贈り物は結婚してから初めてのことだった。

綺麗に包装紙を剥がして、箱を開けると、中には夫が描いた、桜並木の下を歩く私の絵が入っていた。

夫は過去に自信を失って「俺もう二度と筆を握らない」と言って、私の目の前で筆や絵の具を捨てたことがあり、それから絵を描く姿を私は見ていなかった。

「もう一度絵を描こうと思ったんだ」

自室から出てきた夫がそう言った。

「絵で失敗した僕だけど、失敗するたびに立ち上がればいいって言ってくれた君の言葉を思い出したんだ。あの時は、そんな綺麗事言うなって怒鳴ったけど、君の言葉を信じてもう一度、絵を描くことにしたよ。僕は君のような人と巡り会えて幸せだ。改めて、誕生日おめでとう。これからも、ずっと、ずっと大好きです」

私は、この日改めて、夫に恋をした。

この人に私は生涯で何度恋をするのだろう。

何度だって恋をすればいい。

なぜなら、この人は私が巡り会えた運命の人だから。


__贈り物の中身

綴 白_

12/3/2025, 6:22:28 AM