光が差し込む通路。
光が差し込む開放的な廊下。
回廊など調べないと分からなかった。
でも、人間という生物に焦点を当てて考えるが、人間という生物は無自覚にしろ、毎日新たなものを手に入れている。
それに気がつくのが手に入れた時じゃなくてもいい。
しかし、その情報は良いものばかりではない。
偏見に染まったもの、危険なもの、自分に悪影響を及ぼすものなど。
その辺に転がった石ころに例えると、その石ころ一つ一つに善悪があり、その善悪の石を無自覚か意識がある状態で選ぶのが自分だということ。
人間という生物は死屍累々の上で発展してきたが、きっとそれは今も続いている。
光という明るさが眩しくても開放的だと感じる。
それを感じることを当たり前だと思ってはいけない。
大袈裟にいえば、当たり前は存在しない。
だからといって、特別視は難しい問題にあたる。
今生きている事がいかに尊く、儚いものなのか。
この瞬間も命が消え、命が生まれる。
考えれば考えるだけ、思考の渦にのまれ、この世界の生死の交差を強く感じる。
私は今日も、人間という生物を問い、止まることのない生死の交差を感じ、考える。
__光の回廊
__綴 白
初雪が観測された日の、冷たい朝。
あなたは大きな声で泣いていましたね。
でも、あなたの小さな手には私への贈り物が乗せてありました。
幼いあなたが初めて作った小さな雪だるま。
見た目は雪だるまというより、握った雪の塊に枝を何本も刺したようなものだったけど、とても愛らしいものでした。
その雪だるまが溶けてしまった日もあなたは泣いていて本当によく泣く子でしたね。
なのに、いつの間にか私の背を越して部活動や友達、勉強に励む日が多くなり、私の自慢の子供でした。
私が病で倒れた時、あなたは言いました。
「来年の引退試合必ず見に来てよ。だから、早く治してね」、と。
私は今日、あなたの引退試合を見に行けました。遠くからだったけれど、本当に立派になりましたね。
嬉し泣きしてしまった私を、あなたも嬉し涙を浮かべながら抱きしめてくれた。その温かさはきっと忘れることはないでしょう。
本音をいえば、卒業式も見に行きたかった。
でも、今のままだと叶うかは分からない。
──
引退試合を見届けた後、母は強力な痛み止めで痛みを和らげる日々を送ることが増えた。痛み止めを使っても母はベッドから起き上がれない状態だった。
そして、桜舞い散る春半ば。
母は私の卒業式を見てから天国に旅立った。
お母さん、今までありがとう。
お母さん、私を産んでくれて本当にありがとう。
お母さんと過ごせた日々は幸せでした。
ずっと、大好きだよ。
またね
__手のひらの贈り物
綴 白__
白色の世界。
冷たい空気。
最初は寒くて仕方がなかった世界に、僕はただ一度、鳴いた。
子供の頃、僕は流れが速く氷のように冷たい川に落ちた。
「助けて」
その言葉を言いたくても、体温が奪われていく感覚が強く、僕を襲った。
その時、川に戸惑いもなく飛び込んできたのは、群れの長だった。
冷たくなった僕の体温を取り戻そうと、群れの仲間達が必死に僕を温めてくれた。
息を吹き返した僕は、その後、長の命令で両親の元を離れた。
僕は長の元で厳しくも愛に溢れた生活を送った。
長は大人になった僕に、あの冬の日の出来事は僕の母が「この子は冬を越せない。越せても長く生きられない」と悟り、選んだ結果だったと言った。
確かに、大人になった僕は周りのオスよりひと回り以上小さい。
でも、長のおかけで昔と比べたら体も丈夫になり、狩りも上達した。
僕は今日も雪が降る静寂に満ちた山を、長と駆け巡る。
__雪の静寂
綴 白__
宇宙が大好きだって言っていた君の顔を思い出す。
あの日、夕日を背景に波の音を聞きながら、笑顔で僕と別れた君。
たった十五年。それが君の生涯の長さ。病に奪われてしまった君の命。
ねぇ、今、君は宇宙旅行を楽しんでいますか?
僕もそろそろ君の元に行く時が来たみたいです。
笑顔で待っていて下さい。
僕が君の元に行ったら、君の宇宙旅行に僕も一緒に行ってもいいですか?
案内してくれますか?
大好きな君へ。
六十七年待たせてしまったけれど、今行きます。
__夜空を超えて
綴 白_
朝、目が覚めてリビングに行くと、綺麗に包装された箱が机に置かれていた。
差出人は、夫だった。
夫からの贈り物は結婚してから初めてのことだった。
綺麗に包装紙を剥がして、箱を開けると、中には夫が描いた、桜並木の下を歩く私の絵が入っていた。
夫は過去に自信を失って「俺もう二度と筆を握らない」と言って、私の目の前で筆や絵の具を捨てたことがあり、それから絵を描く姿を私は見ていなかった。
「もう一度絵を描こうと思ったんだ」
自室から出てきた夫がそう言った。
「絵で失敗した僕だけど、失敗するたびに立ち上がればいいって言ってくれた君の言葉を思い出したんだ。あの時は、そんな綺麗事言うなって怒鳴ったけど、君の言葉を信じてもう一度、絵を描くことにしたよ。僕は君のような人と巡り会えて幸せだ。改めて、誕生日おめでとう。これからも、ずっと、ずっと大好きです」
私は、この日改めて、夫に恋をした。
この人に私は生涯で何度恋をするのだろう。
何度だって恋をすればいい。
なぜなら、この人は私が巡り会えた運命の人だから。
__贈り物の中身
綴 白_