ピーンポーン
毎朝、チャイムを鳴らしてやってくるのは、俺の幼馴染。カバンを手に取り、母さんに行ってきますと言ってドアを開けた。
「おはよう。智くん」
朝からこんなにキラキラした笑顔を振りまく彼、翔くんに少し圧倒されながらおはようと返した。
翔くんはいつもたくさんの話をしてくれる。口下手な俺はそれにうん、とかそうなんだ、とか相槌を打つだけ。でもこの気を遣わない雰囲気にいつも助けられていて、この時間がいつも楽しかった。こんな日がずっと続いてほしい、そんな思いだった。
しかし、
ある日、いつもの時間にチャイムが鳴らなかった。
おかしいなと思い、扉を開けた。でも翔くんの姿はなかった。
学校に着いて、翔くんの席の方を見てもただ机と椅子が置いてあるだけ。
2日目、3日目になっても翔くんはウチに来ることはなく日は過ぎていった。
翔くんがいなくなってから数日後、母さんからポストに入ってたわよーと手紙を渡された。書いてあった内容は
“また明日”
ただ、それだけ。
こんな状況になっても、俺は自分から何かしようとはしなかった。今考えれば、迎えに来てくれたのも、話を振ってくれたのも、翔くんからだった。
朝、家を出る時間になった。
時計はいつもと同じ時刻を指している。
もちろんチャイムは鳴らない。
それからの朝は、静かになった。
12/29/2025, 12:32:14 PM