死後行き着く場所にて
「僕らの命の終わりって、もう少し派手なものだと思ってたんですよ」
彼は不服そうに呟いた
「あんな静かな終わりだなんて、納得いきませんよ」
確かに、彼の複数の仲間は派手に息絶えている
ここへ来た時も、殺されたわりには自慢気にしていたのが印象的だ
そんな仲間たちに、羨望を持っていたのだろう
彼は本当に残念そうだった
「本来の目的を達成できないとわかってから、逃げつつも目立つ散り様を見せたかった
先に逝った仲間に誇れる死に方をしたかった……」
目的を達成できれば、それに越したことはない
それが叶わないとなり、どうせ無理ならいっそのこと、という思いがあったようだ
「ある仲間は凍りついて死に、ある仲間は大量の毒を浴びて死に、またある仲間は武器で叩かれ圧殺させられました
僕もね、そういうのがよかったんですよ」
彼の無念が痛いほど伝わってくる
私にできることはその無念を聞き続けることだけだ
「僕の死に方は……落ちてきた物の中にスポット入って、そのまま誰に見つかるでもなく餓死ですよ
地味すぎます」
最後の希望まで潰えてしまう悲しみは察するに余りある
「子孫も残せず追いやられ、冷却スプレーも殺虫剤も浴びず、新聞に叩きつけられもしない
地味ぃな事故死です
今頃僕の死体は干からびてるんじゃないですか?」
本当に、このゴキブリは可哀想だ
どうせなら来世は素晴らしい生涯を送ってほしい
私にできることは話を聞くことだけ
それがとても歯がゆい
「来世は、カブトムシがいいな」
大きく出たな
いや、そんな言いぐさはゴキブリという種に失礼か
12/29/2025, 11:31:11 AM