式場の幸せな鐘の音を聞くと、相棒の姿が頭に浮かぶ。
世界一大好きなアイツが真っ白いタキシードを着て、同じ服装のオレの手を引く、そんな光景。
慣れない格好をした自分達を見て何を言うんだろうとか、手を差し出しながらアイツは、どんな風に笑うんだろうとか。
別にアイツとそういう風になりたい訳じゃない。一緒に生きていられれば十分だ。
それになろうもしてもなれない。アイツの矢印は他に向いてるから。
分かってるのに、ふと思い描いてしまう。
王道の契り方をして「家族」になるなんていう未来を。
そうやって虚しい妄想を一通り脳内で流して、勝手に惨めな気持ちになって。
…
とっくに鳴り終わったはずの鐘の音が耳の中で反響する。
それを上書きするために、イヤホンを耳に突っ込んだ。
【遠い鐘の音】
12/13/2025, 2:41:54 PM