【記憶のランタン】
覚えているのは私が幼かった頃
隣の家のお兄さんが
かぼちゃをくり貫いていたこと
好奇心旺盛な私は
そっと近づいてその様子を観察していた
中身が全て出されたら
今度はナイフで表面を型どっていた
だんだんとそれは出来上がっていく
それには顔のようなものが浮かんでいた
「さて、そこのおちびさん?
そんなところにいないでもっと近くにきて
見てごらん」
気付かれていた。
私はどぎまぎしながらそっと隣に行く。
「どうだい?」
どうもこうも幼い私にはよく分からない。
「あげるよ」
そう言ったお兄さんは私の家までそれを運んでくれた。
まだいるとも言っていないのに。
そうして別れた私の部屋には不思議な顔をした
かぼちゃがしばらくの間滞在していた。
11/18/2025, 10:16:14 AM