【世界線管理局 収蔵品
『10年後のお前からの手紙射出機』】
電子メッセージでも、通話でも、ハガキでもなく、手紙に固執する不思議アイテム。
書記言語すなわち文字を含んだ1枚以上の紙を
包んだ紙製の封筒を装填すると
射出機が「10年後の筆記者が書くと思われる可能性」を100パターン算出し、
ランダムでそのうちの1パターンを射出する。
ただし返信は直径20cmの鋼鉄球に封入され
平均時速170kmで射出される。
<<平均時速170kmで射出される>>
――――――
相変わらず平和な世界線管理局です。
その日も管理局の収蔵部収蔵課には、滅んだ世界からこぼれ落ちてきたチートアイテムが、
他の世界に紛れ込む前に回収されて、管理局の収蔵品として順番に、登録されてゆきます。
「うーん、 んうーーーーぅ……」
郵便ポストに野球のエアー式ピッチングマシンを合体させたようなフォルムの手紙射出機を前に、
収蔵品の情報を入力しておった収蔵課職員・ドワーフホトは、悩みも悩んで首かっくん。
「3通」ほど射出されて穴の開いた収蔵庫の壁と、
手元の射出機の説明書とを見比べておりました。
「本当に、これ、うぅーん……
10年後のあたしが書いた手紙……」
10年後の私から届いた手紙は、
ちゃんと、鋼鉄球の中に封入されているのかしら。
ドワーフホトは収蔵課局員として、それを調べなければなりませんが、
なんてったって、相手は直径20cmの鋼鉄です。
重いし硬いし切断して大丈夫か不明なのです。
どうしてこうなったのでしょう。
お題がお題だらかです。 しゃーないのです。
「スフィちゃんから、何か借りてくるぅ?」
収蔵課局員ドワーフホトの、サポートをしておる魂人形1号が言いました。
「ダメだよぉ。スフィちゃん、今日は出張だよぉ」
同じ顔した魂人形2号が言いました。
どうしよっか、どうしよっかぁ。
3号も4号も互いに顔を見合わせて、首かっくん。
5号など鋼鉄を別の収蔵品のチカラで移動させて、自家製チーズの重しにしています。
『はいッ!はいッ!』
頓挫したデータ収集に、ドワーフホトのサポートをしておる電子生命体、通称6号が挙手しました。
『コンちゃんなら!できるかもぉ!』
「そうだー!コンちゃん、何でも開けられるぅ!」
「頼んでみよっかぁ」
「そうだよ、頼んでみようよぉ」
「さんせー」
そうだ!そうだ!
収蔵課の局員・ドワーフホトと、彼女のサポート役たる魂人形たちは決断しました。
ドワーフホトには、本物の稲荷子狐の友達がおりまして、コンちゃんと呼んでおりました。
稲荷子狐は稲荷狐のチカラでもって、あらゆるロックを解除することができました。
今回も直径20cmの鋼鉄球の中から
稲荷子狐の不思議なチカラでもって
「10年後の私から届いた手紙」を、なんとか、どうにか、抜き取ってくれるかもしれません。
「そうと決まれば、出発、しゅっぱーつ」
行ってきまぁす、ドワーフホトが収蔵庫から出てゆきまして、魂人形たちが見送ります。
1号は先回りで稲荷子狐のお母さんに事情を連絡、
2号は管理局の仕事に協力してもらう報酬として、何が妥当か計算します。
3号と4号は「手紙」によって破壊された壁のあたりの掃除を開始して、
5号は取り敢えず、チーズを味見しておりました。
最終的に稲荷子狐の協力により、鋼鉄球の中から手紙の入った封筒が取り出されたものの、
封入されておった手紙は「10年後のドワーフホトから届いた手紙」ではないと、断言されたとさ。
2/16/2026, 4:17:23 AM