雪明かりの夜
今日の夜も予報通り雪が降った。
昨日から降った雪で街は真っ白く包まれていた。
俺は待っていた。
現れなかったらもう、この関係は終わりにする。
もう待ちくたびれて帰ろうとした時、息を切らして走ってきた。
「おせーよ。バカ。」
嬉しくて綻んだ顔を見られないように後ろから蹴りを入れる。
「…はぁ、はぁ、ご、ごめんっ。今日に限って両親が居て抜け出すの苦労して、ほんと、ごめんね。」
「いいよ。来てくれたしな。」
しばらく、冬の夜道を並んで歩く。
「…お前さ、遠くの大学行くんだろ?」
「…うん。そっちは、卒業したら地元で就職でしょ?」
「まあな。俺は勉強なんかしたくねぇし、早く金稼ぎたいしな。」
「そっか。」
会話が途切れて、気まずい沈黙が続いた。
俺が不意に立ち止まるとお前は振り向いて迷わず歩み寄って、軽く俺の唇に自分のを重ねた。
「……あの、さ。お前にとって俺って何?卒業するまでの暇つぶしとか遊びとか?」
自虐して言うと、胸ぐらを掴まれてさっきより強く重ねた。
「遊びなわけない。僕は、本気で君が好きだ。」
また、キスしようとしてくるから慌てて止めた。
「わ、わかったわかった!伝わった!…いくら夜だからって、今日は雪明かりで外明るいから誰かに見られたらやばいだろ。」
「雪明かりの夜、僕と君が付き合った記念日。覚えやすくていいね。」
「なに馬鹿なこと言ってんだよ。」
満面の笑顔でそんなこと言うから、俺もニヤける顔を抑えられなくて、照れ隠に頭を引っぱたいてやった。
12/26/2025, 11:52:12 AM