かたいなか

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先月は、「時を繋ぐ糸」というお題が出ました。
今月は「時を結ぶリボン」とのこと。
完全フィクションなおはなしをひとつ、ご紹介しようと思います。

最近最近の都内某所、某そこそこ深めの鎮守の森に、本物の稲荷狐が居る稲荷神社がありまして、
稲荷狐の一家は皆仲良く暮らしておりました。

そのうち稲荷狐のお母さんは稲荷神社の近くで、
不思議な不思議なお茶っ葉屋さんをしておって、
緑茶からハーブ茶、狐の薬草を使った薬茶等々、
色々と、取り扱っておりました。

で、
その日は稲荷神社に直々に
「ここ」ではないどこか、別の世界から
ドワーフホトというビジネスネームの世界線管理局の局員さんが良きお茶を探して
お買い物に来ておったのですが、

というのもその日、稲荷神社に、
同じ狐の人外、お母さん狐の海外取り引き先、
韓国の「구미호(クミホ)」、九尾狐が
台湾とモンゴルの薬と茶葉をどっさり持って
稲荷神社に訪問販売しておりまして。

「本場直通。阿里山の烏龍茶です」
タパパトポポ、とぽぽ。
淡い水緑色した急須から、べっこう飴の色したお茶が小さな試飲用カップに注がれます。
「この香りは、この山、この標高、この環境だからこそ、生まれた奇跡の香りなのですよ」

ドワーフホトのお嬢さんが、カップに鼻を近づけると、パッ!甘いあまい香りが咲きました。
「はゎぁ……」
ほっこり温めたバニラのような良い香りを、体いっぱいに吸い込んで、ドワーフホトはもう感動。
「お砂糖入れてないのに、ハチミツも入れてないのに、あま〜い香りとあま〜い味がするぅ……」

真空パックされて長期間保存できるとのこと。
ドワーフホトはさっそく3袋、即決です。
「お買い上げ、ありがとうございます」

稲荷のお母さん狐が丁寧に、紙袋に入れます。
韓国の九尾狐はその間、ドチャクソに遊べアソベしてくる稲荷子狐の頭を撫でて接待中。
稲荷子狐に「アニョハセヨおばちゃん」と呼ばれている薬師の九尾狐、は子狐のお気に入り。
だって神社でお母さん狐と商談するたび大陸のお肉や伝統お菓子を土産に持ってきてくれるのです。

「おまけに、これをどうぞ」
ドワーフホトがモンゴル茶の、
中性脂肪が気になる方へ
と書かれた宣伝文句に釘付けになっておると、
稲荷子狐のお母さんが、茶色い紙で丸く包まれた玉を3個、ドワーフホトに渡しました。

チョコレートボンボンを包んだお菓子のような見た目の、ピッチリ固くて小さなそれは、
丸く固められて紙包装された、プーアル茶。
「これも、もちろん産地直送のものです」

へー。おもしろーい。
ドワーフホトが小さな個包装ボンボンモドキの、茶っ葉の包みを開いてみると、
やっぱりチョコレートボンボンのような色した、固くて丸い玉がコロン、出てきました。

これがプーアル茶だそうです。
これも、中性脂肪に良いそうです。
へー。おもしろーい。
でも、いくら紙で包まれているとはいえ、
このまま持って帰っては、なんだか劣化しそうで、ちょっと心配になるのです。

ここでお題回収。
「ここ」ではないどこか別の世界から来たドワーフホトは、サッと不思議なリボンを取り出しました。
それこそ、「時を結ぶリボン」。
先月のお題で登場した「時を繋ぐ糸」から織られた生成物にして、便利な小道具。

「これで〜、よし、っとぉ」
きゅっ、きゅっ。
ドワーフホトがボンボンショコラモドキの紙玉を、幅広のリボンで更に包んでよく結ぶと、
時を結ぶリボンはリボンの中の物の時を止めて、
「それを包んだ時」に、結び固定するのでした。

「あら便利なものをお持ちですのね」
「物々交換、うけたまわりまぁす」
「茶っ葉の長期保存に丁度良いわ」

わいわい、やいやい。
稲荷神社の茶っ葉訪問販売は大収穫。
その後も20分30分、ほっこり続きましたとさ。

12/21/2025, 6:30:15 AM