明日への光
忙しなくて息苦しい日常での唯一の光は、年末の夜だけ。炬燵布団が嵩張るからと暖房がついたカーペットに買い換えようとするあの子に必死に言葉を並べて、今年もその処分を見送らせた。だって、あれが無ければソファにもたれてテレビを見るという名目の中、コタツの同じ面を陣取って距離を詰めることができないではないか。0時を回った瞬間に盛り上がりを迎えるTVの音を遠くに聴きながら、ほとんど空になった缶を合わせておめでとうと言い合うだけ。これだけで直視したくはないタスクの溜まった明日も明後日も生きていける。
あの子が引越ししたてに強引に取り付けた、年越しをここで過ごす約束。今年も何時に着くという確定事項だけメッセージで送りつけ、今年も拒否されなかったということに安堵してお土産の蕎麦と争奪戦寸前の新幹線の座席を予約する。友人が板についてしまったせいで進めることができなくなったこの距離感を、それでも手放したくない大晦日の夜を、あと何年許してくれるのだろうか。
自分専用だと信じたい来客用の布団に身を委ねて、真っ暗な部屋であの子が眠りについた息を聞きながら過ごす夜が何よりも愛おしい。
12/16/2025, 3:41:37 AM