昔々あるところに、お父さんとお母さん、そして、三人の子供が住んでいました。
三人の子供は三つ子で、三人の子供が産まれた時、お父さんとお母さんは大きなショックを受けました。
なぜなら、三人のうち二人はそっくりでとてもかわいらしかったのに対し、残りの一人がとても醜かったのです。
悩んだお母さんは、その子を捨ててしまおうかと思いましたが、お父さんがそれを止めました。
代わりに、家族以外にその子の存在が知られることのないよう、その子は屋上にある倉庫に入れられることになりました。
かわいらしい二人の娘は、彼女達に合ったかわいい服や素敵な部屋が与えられていました。
しかし、二人の娘はそのことを不思議に思っていました。
「どうして私達にはこんなにかわいいお洋服やお部屋があるのに、あの子にはあんなにみすぼらしい服やお部屋を与えるの? どうしてあの子だけ酷い目に遭わせるの?」
二人の娘がお母さんに尋ねますが、「気にしなくていい」と言われてしまうだけでした。
それでも二人の娘は、ほかの子達と同じようにその子と仲良くしていました。
お父さんとお母さんは、それを快く思っていませんでした。
その頃、お父さんは妙な宗教にはまっていました。
そして、どんどんおかしくなっていきました。
それは、三人の子供の六歳の誕生日のことでした。
お母さんはかわいらしい二人の娘のために、誕生日パーティーを開こうとはりきっていました。
お父さんはそんな特別な日だというのに、なぜか朝から姿が見えません。
お母さんが一人で頑張って準備をしているうちに、パーティーが始まる時間になりました。二人の娘のお友達も大勢来ています。
しかし、そんな時間になっても、お父さんは出てきませんでした。
「お父さんたら、どこへ行ったのかしら?」
お母さんがお父さんを探しに行こうとした時です。
家が大きく揺れたかと思うと、どこからか血や汚物に塗れた化け物が現れました。
その化け物は、あの醜い娘でした。
お父さんは、悪い宗教にはまってしまい、生贄を捧げて神を呼び出そうとしていたのでした。そして、生贄として捧げられた娘にその神——邪神が乗り移ってしまったのです。
化け物となってしまったその子は、怒りや悲しみ、憎しみといった負の感情が溢れ出し、とうとうお父さんとお母さん、それだけでなく、その場にいた二人の娘の友達もみんな殺してしまいました。
ただ、いつも仲良くしてくれた、その子にとって大事な姉妹、そして友達でもある二人だけは殺しませんでした。
「どうして私だけ?」
その子は全てを恨んでいました。
それでも、いつも一緒に遊んでくれる二人の姉妹だけは、恨み切れなかったのです。
お父さんは怪しい神様を信仰しているようでした。その子を生かしているのも、どうやらそれに関係しているようでした。
その子はずっと思っていました。
本当に神様がいるのならば、私の全てを捧げるから、どうか私の願いを叶えてください。どうかあの人たちに罰を——。
祈りは届き、願いは叶えられました。
そうして、三人は神様になりました。
『祈りを捧げて』
12/26/2025, 1:47:29 AM