初心者太郎

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—占いの結果—

友人と中華街を歩いていると、占いの店がたまたま目に入った。

「ねぇ、ちょっと寄ってみない?」友人が提案した。
「占いかー、どうせ当たんないでしょ」
「いいじゃん、いいじゃん」

結局、私は友人に根負けして、入ることになった。一人ずつ占うそうだ。

「貴方はもうすぐ、大切な人から大事な贈り物を受け取るでしょう」占い師が言った。

私には、付き合って三年目の彼氏がいる。占いを信じているわけではないが、期待した。

「贈り物って、どんな物ですか?」興味深々に訊いてしまった。
「具体的な物は視えないけれど、小さいわね。でも、貴方にとって大事な物は確かよ」

占い師のおばあさんは、目の前の水晶を見て言った。あれで何が見えているのか分からないが、どうでもよかった。
店を出て、友人に占いの結果を話した。

「それってアレしかないじゃん!」友人は興奮気味に言った。

私達はもう三十代が視野に入っている。友人の言いたいことは分かった。結婚指輪のことを言っているのだろう。

「そうだといいんだけどね」

私は軽く返事をしたが、心の中は熱くなっていた。

「ただいま」

家に帰ると、彼が夕食の準備をしてくれていた。

「おかえり。中華街、楽しかった?」
「うん、楽しかったよ。お土産買ってきたからさ、後で一緒に食べようよ」

彼の姿を見ると、占いの結果が頭によぎる。

「マジか、ありがとう。……そう言えば」彼は料理している手を止め、何かを思い出したように言った。「俺も渡したい物があったんだった」

心臓の鼓動が早くなる。

「手、出して」私の方に来て彼が言った。

私は恐る恐る手を出した。
すると手のひらにのど飴を一つ置かれた。

「え?」
「最近少し風邪気味でしょ?喉が悪くなったら、明日から仕事大変だよ」

確かに彼の言う通りだった。
私の職業は教師だから、喉がやられたら声が出せない。
でも欲しいのはこれじゃなかった。
期待した私が悪いのだ、と言い聞かせた。

次の日、朝起きると身体が軽かった。

「体調はどう?」彼が訊いた。
「治ったみたい」

喉の調子がとても良い。きっと彼からもらったのど飴が効いている。
あの占い師が言っていたことも、あながち間違いではないな、と心の中で思った。

お題:手のひらの贈り物

12/20/2025, 5:55:38 AM