幼き僕は、シャボン玉に手が届かなかった
あの日、宙を彷徨うビー玉に一心不乱に手を伸ばした
あの頃の僕にとってシャボン玉とは煌めきを帯びたこの世界からの祝福だった
自分の掌は世界を抱擁出来ると信じていた
手が届いたその瞬間、まるでそれは最初から存在しなかったかのように跡形もなく弾けてしまうと誰が想像出来るのだろう
今の僕は、シャボン玉に容易に手が届く
しかしもうそれに手を伸ばすことは無いだろう
どうやら僕の手は抱擁するためのものではないらしいから
破滅という運命が利己的に、刹那的に、簡単に導けてしまうと知った
届くということは 罪なのだろうか?
確かにあの瞬間、何かが弾けた
それはきっとシャボン玉という名の世界の輪郭だった
届かなければ良かったのだ、届かなければ永遠に、永遠に失わずに済んだのに
ただ目を閉じることしか許されないのなら、僕の輪郭も弾けてしまえよ
誰か、僕に手を伸ばして 届けて
6/17/2025, 11:53:51 AM