—火の揺れる間—
妻がろうそくを立てて、話しかけてきた。
「今日は、ユメノの体調が回復して、ちゃんと学校に行ったよ」
ユメノは私の一人娘だ。
「それは良かった。熱で寝込んでいたもんな。元気な姿が一番だ」
妻は嬉しそうな顔をした。
「学校では、定期テストの結果の返却があったみたいで、それを持って帰ってきた。どうだったと思う?」
「うーん、最近勉強頑張ってるし、良い結果が出たんじゃないか?いや、そう信じたい」
少し間を空けて、妻が続けた。
「なんと、学年で一番の成績だったんだって!」
「本当か⁈昔は勉強苦手だったのに、ユメノはすごいなぁ」
「将来はお医者さんになりたいから、勉強頑張ってるみたいよ」
胸が熱くなる。「立派に育ったんだな」
「ユメノが大学に行けるように、私も頑張って働くね。昇進の話もあるから期待して見ていてちょうだい」
「あぁ、俺はいつでも見てる」
妻は答えず、ろうそくの火だけが揺れた。
しばらく手を合わせた後、仏壇から離れて行ってしまった。
「ずっと近くで見てるから」
もう、俺の声は誰にも聞いてもらうことはできない。それでも俺はずっと見ている。
お題:揺れるキャンドル
12/24/2025, 5:00:44 AM