【太陽のような 1 】
「あー、ごめん。間違えてもうたわぁ」
「…なんやそれ」
曇っていた。今にも雨が降りそうなどんよりとした空気が身にまとわりつく。
「俺たちの…俺たちの最後の大会やったんやで。そんな軽いもんで済まされてたまるか!なんであんとき諦めたんや。反則負けが1番有り得へんやろ。ちゃっちゃと面決めとけば、1本でも決めとけば決勝進出やってんで。」
「雨んなったら袴が濡れてまう。はよ中入ろうや」
「……どうして」
「どうしてもなにもないやろ。負けたもんは変えられへんやん。しゃーない。」
「こうたは、勝ちたいと思わんかったん?」
静寂のせいか、頭を空っぽにさせるような、ぐちゃぐちゃにしてしまいそうな、そんな気分になる。
「勝ったらなんになるんや。俺もお前もそらも、卒業してから剣道続けるわけやないやん。」
「……ほんまそういうとこ。」
「はぁ?なんでお前なんかにあれこれ言われなあかんの」
顰めた眉の下には痛いくらい刺してくる視線があった。それに対抗するように目を細める。きっと威嚇にもならない。こうすることによって自分にとって自分が少しでも大きく見えるようにするだけ。
「俺は!ただ、笑って、終わりたかったんだよ……」
無意識のうち喉が震え始め、声が滲む。そうだ、笑って終わりたかっただけんだ。今までの吐きそうになるまでやって来た練習も、休み時間の顧問からのお説教も、全部この日の為だったんだねってきらきらした終わり方を。
「なんで、なんで諦めるとか……」
いつの間にか静寂は消え、俺たちの頭に雨が降り注いでいた。
「…ねえ、こうた。剣道、そんなにつまんなかったかなぁ」
相変わらずこうたは口を閉じたままだ。
「応えろってば…」
2/23/2026, 8:59:11 AM