行かないでと、願ったのに キンモクセイ です。
行かないでと、願ったのに
「今年こそは。って、何度買っても結果は同じ。だから、明日買いに行っちゃダメだよ」
「うん、わかってるって」
あなたは笑って頷いたのに、どうしてここにいないの?
「うん。って言ったのに…」
行かないでと、願ったのに、あなたは今年も行ってしまった。
必要のない、私にとってはガラクタとしか思えない物が詰まった、福袋を買いに。
キンモクセイ
秋になると、街中から香ってくる、キンモクセイの香り。
秋の訪れを知らせてくれるその香りが、私は好きだった。
「私、キンモクセイの香りが好きなんだ」
街中をあなたと歩きながら、キンモクセイの香りにつられ立ち止まる。
「いい匂いだよね。俺も好きだな」
「でも、少しの間しか堪能できないのが残念で」
「確かにね。でも、フレグランスでキンモクセイがあるとは思うけど、それはなんか違うんだよな」
「そうなんだよね。否定するわけじゃないけど、やっぱり本物がいい」
「じゃあ、キンモクセイの香りをたっぷり堪能するために、歩いて出かける機会を増やそうか」
「うん、そうしよう」
香りを楽しめる時間が少ないキンモクセイ。できる限り、香りを楽しもうと思うのだった。
11/11/2025, 9:48:55 AM