運命

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また今年もよく積もった。雪を踏みながら思った。なぜ雪はこんなにも捉えどころがないのに、一度踏んでしまうと土色に滲んでしまうのだろう。新しく積もった雪を少し頬張る。味が変わって来た。子供の頃はもっと雪菓子のように透き通っていたのに。変わってしまったんだな。
小川まで雪を踏み締めてきた。小川は冷たく、布に水が染み込んで行くように痛い。昔の呪術師はこの水でお清めしていたらしい。小川の橋を渡りながら思い出した。澄んだ空気は炬燵であったまった体には少し厳しかった。手遊びに雪兎を1羽拵えた。嬉しそうにその場で跳ねて回ったが少し寂しそうだった。もう1羽拵えると2羽で番となり、雪景色に溶けていった。
先日飼っていた鷹が死んだので遺灰を小川に流した。
「遠くに飛んでお行き」
遺灰は川に流され橋をくぐると、冷風に当てられて舞い上がった。
“わしらは輪廻の輪にいる。いつでもあえるではないか。また会おう”
空に翔んで行く“声”を聴いた。
‘嗚呼。ちと休んでからまた帰ってこい’
目から溢れる涙は足元の雪を濡らした。

12/17/2025, 10:29:24 AM