運命

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12/19/2025, 12:44:32 PM

夢を見ていた。三日月に座って釣りをしていた。何も釣るものはない。でもその状態がとても心地よかった。ずっとここが良かった。下には街が広がっていて、空には星々が灯りを放っていた。寝ているような夢を見ているような。布団に入っているように暖かく安心できる。まるで母親の腕の中で守られているような。
ここは何も焦ることがない。ただただ僕自身がここに居たいと思えるような空間そのままだった。何もかかるはずのない釣竿をしっかりと引く感触があった。それも結構な大物。思いっきり引っ張ると、終わりが見えない千羽鶴が反動でうねりながら釣り上がった。
「すごい」
ただただそう思ってしまった。
釣り上げた反動で千羽鶴から数十羽の鶴が散らばってしまった。集めようと手を伸ばすと鶴たちの方から僕の方へ近寄って来た。1羽が言った

「元気になってね」

もう1羽が言った

「良くなってね」と。

鶴たちは僕の周りを周回しながらそう言った。

「頑張って」

「また学校来いよ」

「学校楽しいよ」

「みんな待ってるよ」

「がんばれ。大丈夫。お母さんがついてるよ」
声の方を振り向くと、僕の左手を両手で握りしめている母の姿が見えた。母の頬から一筋の涙が見えた。僕の左手にその雫が落ちたときに、それに合わせるように周りの鶴たちが僕を囲った。全ての鶴が光を放ちながら僕に入り込んでくる。
 病室に飾られている千羽鶴が爆ぜると同じタイミングで、病床の僕が目を覚ました。
「おはよ」
僕がそういうと母は握りしめていた僕の左手を離して顔を涙で濡らしながらずっと抱きしめてくれた。何も言わずに一心不乱に。
“おかえり”
1羽だけ残っていた鶴がそう言ったような気がした。



12/18/2025, 10:34:27 PM

分かっている。君だって分かってるはずだ。どうしようも出来ない自分自身が一番もどかしいんだから。でも、だけど、自分自身が一番足掻き苦しんだことはわかってほしい。初めからそもそも手の届かない場所だったんだ。

何かとは言わないが、この書き物を読んでくれている皆さんは、人それぞれ一度はこういうことを体験したことがあるのではないでしょうか?また、このような状態に憧れているというか、こういうセリフを言ってみたいと思ったことがあると思います。僕もいつかは言ってみたいと思います笑。こういう状態になるにはいくつかの選択肢が有ると思います。皆さんが上の書き物を読んだ時点で思ったのは恐らく‘恋愛’なんじゃないかなと思います。これから色々な経験をしてその度に自分で言った事を明言として確立させて、僕自身の武勇伝として記していきます。
 みんなはもっと自由に気ままに生きていいんだと思います。

12/17/2025, 10:29:24 AM

また今年もよく積もった。雪を踏みながら思った。なぜ雪はこんなにも捉えどころがないのに、一度踏んでしまうと土色に滲んでしまうのだろう。新しく積もった雪を少し頬張る。味が変わって来た。子供の頃はもっと雪菓子のように透き通っていたのに。変わってしまったんだな。
小川まで雪を踏み締めてきた。小川は冷たく、布に水が染み込んで行くように痛い。昔の呪術師はこの水でお清めしていたらしい。小川の橋を渡りながら思い出した。澄んだ空気は炬燵であったまった体には少し厳しかった。手遊びに雪兎を1羽拵えた。嬉しそうにその場で跳ねて回ったが少し寂しそうだった。もう1羽拵えると2羽で番となり、雪景色に溶けていった。
先日飼っていた鷹が死んだので遺灰を小川に流した。
「遠くに飛んでお行き」
遺灰は川に流され橋をくぐると、冷風に当てられて舞い上がった。
“わしらは輪廻の輪にいる。いつでもあえるではないか。また会おう”
空に翔んで行く“声”を聴いた。
‘嗚呼。ちと休んでからまた帰ってこい’
目から溢れる涙は足元の雪を濡らした。

12/17/2025, 7:09:41 AM

夜の9時ごろ部活を終えて帰路を辿っていた。空の端が微かに白い。吐く息が白い12月の下旬。自転車の「シャアシャア」と漕ぐ音が夜の闇に飲み込まれて行く。いつしか道を間違えたみたいだった。悴んだ手で手袋を取り、汗で濡れたズボンのポケットからスマホを取り出した。
「圏外」とスマホの表示。どうしたものか。色々試してみたがどうしよにも上手くいく気配がない。
 一瞬右腕が爆発したかと思った。意識よりも鋭い痛みが先に来た。突然のことでパニックになり自転車から転げ落ちた。
「パシュッ」。
背後から一本の矢が耳を掠めて手前の道路に突き刺さった。自転車で背中を守ってその場でうずくまった。右手を見るとひび割れたスマホごと矢が手のひらを貫かれていた。その間にも自転車に隠れている僕を殺す気で次々に矢が放たれていた。矢が当たって跳ね返る音。フレームに当たって火花の光を目の端が捉える。矢玉に晒される。正確でありながら雨のように止まる気がない。全身を痛みが喰らいつく。左手は手首から無くなっている。右手はもうちぎれかけている。
逃げないと。逃げないと。逃げないと。逃げないと。
全身の感覚がないまま足に「逃げろ」と信号を出す。右足を踏み出すと矢が容赦なく射抜く。目の前の塀にたくさんの矢が刺さっている。この矢の全てが、骨を断ち、肉を切った。「僕なんか悪いことしたかな?」
「ミャーオ」
目の前で白い猫が鳴いた。



轢いてごめんね

7/22/2025, 11:31:52 AM

「また今度ね」
「また来ようね」
そう言って実現しなかったイベントが今までどれほど存在しただろう。
山に夕日が差し込み、空、そして空間が橙色に淡く染まる。蚊柱を手で払いのけながらウォーターシューズの砂を小川で濯ぐ。泳いで疲れて、でもゴツゴツとした河原を歩く。
車に着くと蚊に刺されたところを鬱陶しく掻き、そのまま寝てしまった。
あの頃は楽しかったなぁ〜 でももう戻ってはこない。
1日1日を大切に過ごそう。
テレビの動物の番組を見ながら片手にスマホで描きながら思った

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