そら豆

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「もうすぐクリスマスだね」
舞が白い息を吐きながらいった。
「どこかいきたいところとかないのか?」
僕はそんな彼女に尋ねる。空気の冷たい街の中でコンビニのコーヒーを飲む。澄んだ空にガラスが飛んでいる。
「別にいきたいところなんてないよ」
「ほんとか?」
そんな会話をしつつ、僕は舞と一緒に家にはいる。
「お邪魔します」
舞は一礼し、そのままソファの上に寝転がる。
礼儀がいいのか悪いのか。まぁ、それが彼女の魅力なんだけど、
「買っていたけど、つけるか?」
「つけたい!」
僕は袋からろうそくを取り出す。ちょっと長めの模様のついたろうそくだ。ライターを取り出し火をつけようとすると、
「私にやらせて!」
そう叫んで舞はライターを奪うようにほくの手から取った。
「急に手伸ばすなよ。危ないじゃないか」
僕は呆れていった。やけどでもしたらどうするつもりなのだろうか。
「ごめん…そうだよね。うん…」
そこまで強く言ったつもりはないけど、舞は下を向いた。落ち込んだ時にする癖だ。
「べ、別にいいからさ!早くつけてみてよ!」
僕は励ますように声を大きくした。
「そうだね。早くつけてみよう!」
情緒不安定だな。いつもは真面目なのに、僕といる時は限りなく子どもっぽくなる。これが本来の彼女なのか。
「じゃあ、つけるね」
舞がろうそくに火をつけた。
「部屋暗くしたほうが雰囲気出るかも?」
僕は部屋の電気を消した。ろうそくの炎が僕らを照らしている。
身や心を包んでくれるような明かり。
優しい光に照らされている時に、舞は口を開いた。
「さっき、どこに行きたいって聞いたじゃん」
「うん」
舞は暗い部屋でもわかるくらい赤くなり、
「勇人が一緒にいるなら行きたいなって」
部屋に灯ったろうそくは、静かに揺れていた。

12/23/2025, 1:23:25 PM