蝉助

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太陽のような方だった。
骨冷える寒空の日、我々のために火を焚べてくださった。
震えることなく。
尽きることなく。
貴方に照らされて輝く月でありたいと言えば、烏滸がましいと言って笑った。
崇高な方だったが、彼は決して人を傍に置かなかった、その命途切れる瞬間さえ。
それは彼自身をより神聖に見せた。
私は彼の代わりにはなれないと知っていた、なぜなら月であるから。
否、光を与えてくれる太陽が無くなった今、私は月と呼べるものですらない無名の衛星だ。
「彼」になれずとも「彼役」になるよう務めた。
勇敢を演じ。
快活を演じ。
そのうち人は私を尊ぶようになった。
心地の好い称賛と同時、腸が明かされることを恐れるようになり、いつしか、本来の自分を拒絶した。
写真家の撮った私の姿を見て、理解した。
私もまた周囲を焦がし近寄らせぬことで する太陽であったと。

2/23/2026, 5:45:33 AM