広がる景色に、彼の名を呼ぼうとした口を噤んだ。舞い落ちる枯葉の中で薄ら見えたのは、彼の後ろ姿。桜によく似合うと思っていたふわふわとした黒い猫毛は、存外秋の橙にも映えて。見蕩れていれば、目の前の癖毛がふわりと動いた。気付けばいつの間にか彼はこちらを振り向いていて、にぱりと口を大きく開けて俺の名前を呼びながらこちらへ駆け出す。普段は猫のように飄々としている癖をしてその反応は飼い主を見つけた犬のようで、俺も思わず笑い声を上げて手を振った。
2/19/2026, 9:45:02 PM