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0からの(オリジナル)(異世界ファンタジー)

幼馴染の仲間を失って、ラッツはひとり旅立った。
仲間を亡くす原因となった魔剣を手に。
得意だった魔法を、呪いで封じられたまま。

(もう少し、何とかなると思ったんだけどな…)
顔を腫らし、半分目が塞がった状態で、ラッツは地面に倒れ伏していた。
知らない村で宿に泊まったら、村ごと野盗の住処だった。就寝中に襲われて身ぐるみ剥がされ、身一つで外に叩き出された。
取られたのが金なら諦めるところだが、仲間の形見の品や魔剣も取られてしまった。
取り返すべく何度も村に潜入したが、すぐに見つかり、多勢に無勢、全く歯が立たない。
今も見つかって袋叩きにあったところだった。
(魔法さえ使えれば…)
己がいかに魔法に頼って来たか、痛感した。
剣術は少し使えるが、今は剣もない。
今は、傷を治してくれる仲間もいない。
それでもやはり、諦める選択肢は取れなかった。
ギラギラと怒りの炎を瞳に宿し、ラッツは決断した。
己の優先順位に従い、非情にもなりきると。
そうでなければ、この世界、生き残っていけない。
ラッツは多量の火矢を用意した。
同時に、近隣の村に赴いて野盗退治の協力をあおぐ。
野盗の村を焼き討ちし、大混乱を引き起こしたどさくさに紛れて己の私物を取り返し、その場から逃げ去った。

またある時は、毒を盛られた。
やはり宿で油断をしていた時だった。
一命は取り留めたが、やはり剣を盗まれた。
血眼になって行方を探し、なんとか取り戻す事ができたが、本当に肝が冷えた。
これは今後も想定される危機だろう。
そう思ったラッツは、毒について調べ始めた。
耐性をつけるために、毎日少量の毒を飲んだ。
何度も死にそうになりながら、やがて、かすかな臭いで毒の混入を察知できるまでになった。

ゼロからのスタートは、苦しい日々だった。
能力を失った一人旅は想像を絶するほど過酷だった。
人間、楽勝でいられなくなると、醜くも汚くもなるもので、昔より性格が悪くなった自覚はある。
人を騙し、盗み、すぐ逃げる。
何より裏切られすぎて、他人を信じられなくなった。
けれど、ラッツは平気だった。
元々、仲間の形見とともに冒険するという贖罪の旅だったので、むしろ当然の罰だとさえ思っていた。
とはいえ、魔法の道具さえ使えない呪いは正直キツくもあった。
(…これを解呪できる人を探すか)
右手の甲の呪いの紋章を眺めて、ようやく決意する。大陸を西に西に進んできて、大海の際にまで到達したが、これまでは生きるのに必死だった。
海をさらに西に行く船は出ていないようなので、今度は東に戻る旅になる。
(まずは西北端に行ってみるか)

そこでラッツは世界を揺るがす大事件に巻き込まれ、新しい仲間ができるのであるが、それはまた別のお話。

2/21/2026, 11:49:37 AM