白色の世界。
冷たい空気。
最初は寒くて仕方がなかった世界に、僕はただ一度、鳴いた。
子供の頃、僕は流れが速く氷のように冷たい川に落ちた。
「助けて」
その言葉を言いたくても、体温が奪われていく感覚が強く、僕を襲った。
その時、川に戸惑いもなく飛び込んできたのは、群れの長だった。
冷たくなった僕の体温を取り戻そうと、群れの仲間達が必死に僕を温めてくれた。
息を吹き返した僕は、その後、長の命令で両親の元を離れた。
僕は長の元で厳しくも愛に溢れた生活を送った。
長は大人になった僕に、あの冬の日の出来事は僕の母が「この子は冬を越せない。越せても長く生きられない」と悟り、選んだ結果だったと言った。
確かに、大人になった僕は周りのオスよりひと回り以上小さい。
でも、長のおかけで昔と比べたら体も丈夫になり、狩りも上達した。
僕は今日も雪が降る静寂に満ちた山を、長と駆け巡る。
__雪の静寂
綴 白__
12/18/2025, 6:24:25 AM