—君の余命を知ってしまった日—
今日は、彼女とデートの予定がある。
俺はその準備で急いでいたのに、母に呼び止められた。
「あんた宛に何かきてるよ」
どっさりと郵便物を抱えた母から、白い封筒を一通、手渡された。
「俺宛に?」
「うん。見てみなさいよ」
確かに封筒の裏には俺の名前が入っていた。
こんな急いでいる時に、と思いながらそれを持って自室へ向かった。
封を切り、中を覗く。
小さな一枚の手紙が入っていた。
『十年前の私へ』
そう書き出された手紙を、俺は読み始めた。
『十年前の私には、付き合ったばかりの恋人がいると思う。名前は村上雫さん。』
ここに書いてある通りだった。
一週間前に俺は勇気を出して、雫に告白をした。
『信じられないと思うけれど、しっかり読んでほしい。
村上雫は一年後、大きな病にかかる。』
手紙を持つ手が震えてきた。
『彼女は医師から余命宣告を受けていたのにも関わらず、直前まで私にそのことは教えてくれなかった。
彼女が目の前で死んでしまう未来を見たくないのなら、今すぐに別れてもいい。
だが、もし、それでも彼女と付き合う選択をするならば、彼女に色々なことをしてあげてほしい。
未来の私は、彼女が亡くなる直前にこのことを知って、何もしてあげることができなかった。
私は、それだけが心残りなんだ。どうか、よろしく頼む。』
震えた文字で『十年後の私より』と締めくくられていた。
本当なら、この手紙をビリビリに引き裂いてやりたかった。単なる悪戯で、俺をからかっているだけだと言ってほしかった。
だが、俺はこの手紙を信じざるを得なかった。
なぜなら……。
この手紙は、俺の書く文字と全く同じ筆跡だったからだ。
お題:10年後の私から届いた手紙
2/16/2026, 6:04:14 AM