今日にさよなら
幼い頃、「書く」ということは、忘れないために記憶しておく行為だと思っていた。
学校に持って行くものを書く。
日記を書く。
読書感想文を書く。
大人になり、小説や短歌を創作するようになってから、私の中で「書く」という行為は、別の色彩を帯びはじめた。
私はいま、記憶しておくためでなく、記憶を手放すために書いているような気がしている。
忘れられない出来事に、つかみどころのない気持ちに、名前を与えて、送り出してやる行為。
たとえば、
形を持たぬそれに「鳥」と名づけた瞬間、
翼を得て飛び去ってゆくように。
名前を与えたそのときから、
それらは静かに私を離れてゆく。
そうして幾度もさよならを重ねてゆくこと。
それこそが人生というものなのかもしれない。
だから私は、今日も書き続ける。
2/19/2026, 12:28:17 AM