〈心の境界線〉
思春期の友達関係というものは難しい。ほんの小さな事がきっかけで、消えない心の境界線が出来てしまうのだから。
新学期に新しくできた友達。最初は仲良くしていたのだが、いつの間にかあまり話さなくなってしまった。話しかけても返ってくるのはそっけない返事ばかり。何となく嫌われたように感じた。挨拶はしてくれるので私の勘違いだったのかも知れない。だか、直接聞いてみるのは怖くて、モヤモヤしたまま気まずい関係が続いた。こうして私たちの間には境界線が出来てしまった。
先日、珍しく二人とも部活がない日に、一緒に駅まで行ってみた。驚いた事にそれなりに会話が弾んだ。少なくとも私はそう思う。目的地で手を振って別れた時、何だか境界線が消えたような気がした。
次の日、ひょっとしたらまたあの時のように話せるかもしれない、と期待して登校した。彼女が教室に入って来た時、挨拶が苦手な私がタイミングを見計らっているうちに、彼女は他の友達と話し始めてしまった。一度消えかかっていた境界線がまた浮き出てきたのを感じた。
それからも彼女とは上手く話せていない。授業の班活動でも気まずい雰囲気になってしまった。もう境界線は消えないのかもしれない。
ただ、たとえ境界線を完全に消すことはできなくても。それが壁になってしまうのだけは防がなくてはならない。壁ができて「気まずい」が「嫌い」になってしまったら取り返しがつかなくなるし、争いに繋がる可能性だってある。それに、細い境界線に気がつく人はそこまでいないだろうが、壁になってしまえば誰にでも見えるようになり、周りにも影響があるかも知れない。
心の境界線を消すのは私達の年代にはかなり難しい。それでもせめて壁にはならないように、機会があれば薄く出来るように頑張ってみたいと思う。
11/10/2025, 9:16:40 AM