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 道に迷ったのだろうか。田んぼのあぜ道と、畑の脇をひたすら歩いている。この辺りのはずなのだけど、それらしきものは何にも見えない。

 おまけに季節外れの暑さで、太陽がじりじりと照りつけてくる。真っ青な空と、遠くに連なる山が見えるばかりだ。

 ふらふらと歩き続ける。やっと家や建物らしき
ものがポツポツと出てきた。道沿いを歩いていると、農産物を売る店があった。店先に日陰があったので、ふらっとそこで立ち止まった。

 すると、中にいるおばあさんと目があった。椅子から立ち上がって、何度も手招きしている。行ってみると「顔色悪いね。大丈夫? 麦茶あるから少し休んだら」と言う。勧められるままに椅子に座った。

 奥に麦茶サービスと書いてあるポットが置いてあった。麦茶を入れた小さな紙コップをもらう。コップは思いのほか、熱かった。「今の時期は温かいの入れてるの。今日は冷たいほうがいいくらいだね」。

 ぼぉーっとしながら、温かい麦茶をゆっくりと飲んだ。しばらくすると、「あぁ。だいぶよくなった?」。おばあさんがにっこり笑っている。薄暗い店の中で、おばあさんの周りが太陽のように輝いて見えた。

「太陽のような」

2/23/2026, 7:22:52 AM