ストック1

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「手のひらの贈り物だー!」

突然、掌底打ちされた
なんだこの妹は
腰を落としたかと思ったら俺の腹部に衝撃を与えやがったぞ
俺はたまらず膝をつき、うずくまる
こんなプレゼントは御免被りたい

「このバカ兄め
私が友達と分けるはずだったお高いチョコレートを食い散らかしただろう!」

何を言い出すかと思えば……

「知らねえよコノヤロー
俺はいかにも高そうなチョコを見ると圧を感じて足がすくむんだ
そんな人間が食うわけねえだろ」

「え、そうなの?
決めつけてごめん……
じゃあ誰が食べたんだ?
他に食べそうなのは……」

ま、嘘なんですけどね
高いチョコを見て足がすくむとか、適当に言ったのに本気で信じてやがる
んな状況あるわけねえ
相変わらずチョロいな

「小春かなぁ
あの子ならしかたないか
チョコを見つけて目を輝かせて思わず食べちゃったんだろう」

そして、罪を末妹になすりつけることに成功した
この妹……春奈は小春には甘い
ゆえに小春を追究しないため、真相は闇の中
春奈が追究しない以上、小春が否定することもない
我ながら完璧だ
俺は怒られず、春奈は小春ならしょうがないとなり、小春は濡れ衣を着せられたことに気づかない
誰も傷つかないじゃないか
さらに俺はうまいチョコを堪能できた
これ以上ないハッピーエンド

「そういえば、小春が苦手なヘーゼルナッツが入ってるのがあった気がしたけど、それも食べちゃったのかな?」

ヘーゼルナッツ?
ああ、この間家族用に親父が買ったテリーチョコと勘違いしてんな

「イワノフのチョコはナッツ類は使わないから、大丈夫だろ」

「あ、そっか
テリーと混同していたよ
……ん?」

ふと、春奈がなにか違和感を感じたような顔をした
そして、こちらを睨む
え?
なに?

「お前、どうして私が買ったのがイワノフだと知っている?」

あ、ヤベ

「私はね、チョコを食べただけなら、掌底打ちと説教だけで済ませたよ?
けどお前、可愛い小春に罪をなすりつけようとしたよな?」

「春奈、一旦落ち着こう
たまたま見かけたんだ」

「時間的にありえないね
お前が帰ってきたのは小春が出かけたあとだ
小春が食べたならお前はチョコの包装を見ることはない」

「あ、あ……
もしかして、これ、詰み?」

「やることは色々あるが、まずはもう何回か、手のひらの贈り物をさせてもらおうかな」

俺が逃げる姿勢を取る前に、春奈は一気に距離を詰め、強烈な連撃を食らわすのだった
いやもう勘弁してください
同じやつプラス謝罪分を買いに行きますから

12/19/2025, 11:43:49 AM